近藤 誠介(文化の森スクール・徳島)
先号のアロー教育研究所の田嶋先生の文章中で、山崎貞先生の「新々英文解釈研究」に思わず目を止めてしまいました。今ある参考書のルーツともいえる本で、文法書の「新自修英文典」とセットになっています。両著作とも大正の初めに刊行され、この山貞の「新自修英文典」「英文解釈」を旧制高校や旧商大の受験のために旧制中学生が勉強したようです。それぞれ昭和40年、38年に新訂新版で発行されました。
私が高校時代に使用したのはその改訂版です。両書とも“名著復刊”として2008年に出版されました。書店で目にすると思わず買い求めてしまいまいした。こういう時代だからこそ正統派の英語も面白いのでは。
その「新自修英文典」の「動名詞と分詞との比較の項」で、この項を始めたいと思います。
動名詞
“GerundとParticipleは同じ形を持っているが、ParticipleはVerbal Adjective(動詞状形容詞)であるから必ず名詞に関係する。しかるにGerundはVerbal Noun(動詞状名詞)であるから、それ自身がSubject、ObjectあるいはComplementとなることができる。”
―新自修英文典―
補足しておきますと、現在同じ形(~ing)の現在分詞と動名詞は古英語(8~11世紀)では、現在分詞の語尾は-ende などで、動名詞の語尾は-unge などでした。中英語(~15世紀)では、-inde/-ingeに。
それが今までに混ざり合って中間的な~ingになってしまいました。
形式として、例)take
a. taking 単純動名詞 b. having taken 完了動名詞
c. being taken 受動動名詞 d. having been taken 完了受動動名詞
・動名詞の表す時
動名詞は、特定の時とは直接的な関係を持ちませんが、相対的な時関係を持つことができます。動名詞の現在形(単純動名詞)は基本的には同時性を表しますが、しかし、この同時性はゆるやかなもので、主動詞の表す時を基準とすると、未来の場面(後行性)や過去の場面(先行性)を表すが、後行性を表すことは少ないといえます。
He denied telling me.〔先行性〕
Accepting this plan means getting up very early tomorrow. 〔後発性〕
・意味上の主語
形式的な英語では、属格形や所有格形が用いられ、略式的な英語では目的格形が用いられます。動名詞節が文の主語である場合、動名詞節の主語は目的格形は用いません。
His being too credulous often gets him into trouble.
次の動詞のあとにある動名詞の主語は、通例所有格形が用いられます。
avoid、consider、defer、postpone、delay、deny、enjoy、put off、suggest、risk
・直接目的語としての動名詞と不定詞の意味上の差異
動名詞は通例、一般的な形で場面を表し、不定詞は通例、未来において実現可能な場面を表す。したがって、(現在あるいは過去の、または時間指定のない)経験を表す場合は動名詞を用いることが多く、話し手が可能な未来の場合について話す場合には不定詞を用いることが多いと言えます。
・動名詞のみを従える動詞
admit、appreciate、avoid、consider、delay、deny、dislike、endure、enjoy、escape、excuse、face、fancy、feel like、finish、forgive、give up、can’t help、imagine、mention、mind、miss、postpone、practice、put off、recommend、resent、resist、risk、can’t stand、suggest
この種の動詞のあとにくる動名詞は、「事実指向的」という特徴を共有します。つまり、「動名詞の内容が真である」ことを、話し手が前提としていることになります。
・不定詞のみを従える動詞
A. afford、agree、ask/beg、choose、decide、consent、expect、go on、help、hesitate、hope、mean、offer、prefer、promise、propose、refuse、swear、trouble、want/wish、hope、plan
この種のto 不定詞は、前回示したようにその表す動作が「未来指向的」という特徴があります。
B. 含意動詞
次の動詞は、過去時制においてto不定詞の内容が真であることを含意します。含意動詞は、「未来指向的」というより、「事実指向的」です。
bother (わざわざ…する)、happen、get/learn、manage、neglect、pretend、remember、dare、have the kindness、forget、decline、fail、cease
Bill happened to break the window. / He failed to pass the test.
・動名詞とto 不定詞の両方をとる動詞
A. どちらをとるかで意味が異なります。
動名詞は<事実指向的>to 不定詞は<未来指向的>
go on doing 「…し続ける」、go on to do 「続けて~する」
He stopped speaking and went on to read the letter.
try doing「…やってみる」、try to do 「…しようとするが、できない」
mean doing 「(結果として)…することになる」、mean to do 「…するつもりである」
The new order will mean working overtime.
(この新しい命令では、超過勤務ということになる。)
afraid of doing
①「…するのではないかと心配する/恐れる」
I was afraid of losing my way.
②「怖くて…できない、あえて…する勇気がない」
I am afraid of going out at night.
afraid to do ②と同じ意味
sure /certain of doing 「(主語が)…することを確信している」
sure /certain to do 「(話し手が)必ず…すると信じている」
B. 好悪動詞においても、動名詞の<事実指向的>不定詞の<未来指向的>は、有効であるようです。
love、like、prefer、hate、
×I’ll like dancing this evening. → I’ll like to dance this evening.
×I’d like telling you something. → I’d like to tell you something.
×I like dancing, but I don’t like dancing now.
→ I like dancing, but I don’t like to dance now.
×Mary loves to be a woman. → Mary loves being a woman..
C. attempt、intend 、propose (もくろむ)
動名詞とto 不定詞のどちらもとりますが、未来指向的な意味をもつ不定詞のほうが普通です。
D. begin 、start
しばしば同義に使用されますが、次のように「可能性」と「実行」の対立が明瞭な場合もります。
He started to speak, but stopped because she objected.
He started speaking, and kept on for more than an hour.
begin、startが進行形の場合は、to 不定詞が好まれます。
E. continue
He continued to speak.
(〔一度中断したあとで〕彼はまた話しはじめた。)
He continued speaking.
(〔中断せずに〕彼は話し続けた。)