私塾ねっと誌上句会「春夏秋冬」再開第五回

<谷村選&評>

石鎚の険しき道に盛夏来る
青鷺や水面睨んで不動尊

木内恭裕(徳島県)

四国生まれの者にとって、石鎚山は霊峰と崇められる特別な存在だ。愛媛出身の小生は思わず返句「石鎚は全山青き梅雨の明け」。

亡き犬に鼻なめられて夏の夢
あの本屋この本屋も消え梅雨の街

中村直人(神奈川県)

松戸市の郊外である我が街からも本屋さんが消えて久しい。当初は街から文化が消滅したと嘆いたが、Amazonは便利とパソコンに向かう自分って、不誠実?

暑中見舞い返信書く手にあせにじむ
梅雨明けや耳鳴りの音三重奏Cm

長江勝秋(神奈川県)

梅雨明けの句、結句のCm(ツェーマイナー)はドミソの和音コード。さすがジャズマニアの勝秋さん、なんともしゃれた一語を添えられた。ギターを習うとまず最初に覚えるのがこのコード、梅雨明けだけに耳鳴りも快適、爽やかな音に聞こえたということであろう。

万緑の中や信濃の御開帳
夏草や名のなき草はなかろうに 

谷村志厚(千葉県)

最終面の「表紙の花ことば」で紹介した牧野富太郎博士へのオマージュ。この方も四国のご出身(高知県)、石鎚山の植物もずいぶん採集されたことでしょう。

編集部よりお願い

次号は11月発行の晩秋号です。 投句はお一人3句まで秋の季語でお願いします。投稿は、谷村までメールでお送りください。締切は10月末日です、ふるってご投稿ください。