講師のための英文法 vol.4

近藤 誠介(文化の森スクール・徳島)

不定詞

不定詞の不定とはどういう意味でしょう?

英語は本来、屈折語であるということを思い出していただきたい。動詞の形は主語と時制によって決定される、つまり定まるのです。ところが、不定詞は主語の人称とか時制に関係なく同じ形であり、つまり定まっていないので不定ということになります。不定詞には、to不定詞と原形不定詞がありますが、元々は原形を指します。

そして、不定詞とは「動詞でありながら名詞的性質をあわせもつ、動詞の観念を表す形」です。また現在の助動詞のwillは古英語の動詞「…を望む」という意味のwillanに由来します。またcanはcunnan(知っている)という動詞です。不定詞は名詞的なはたらきをするものですから、他動詞の目的語にもなります。動詞cunnan+目的語としての不定詞、動詞+不定詞などが時を経て、現在の助動詞+原形不定詞になりました。

動詞+不定詞(原形)を使う形はフランス語やスペイン語でもあります。
(仏)Je veux aller ǎ Marseille.(I want to go to Marseille.)

では、to 不定詞とは?

古英語では、前置詞to(トー)は名詞、代名詞として不定詞を従えました。toは方向を表しますので、to secgenne(トー・セジェンネ)、secgenne動詞「言う(こと)」にtoがついて「言う(べき)方向」という意味になります。このように、to不定詞には元々「~する方向に」という未来志向があるのです。中英語の時代になって動詞の屈折語尾が消えていきました。3単現は別にして、不定詞が現在形と同じ形になり区別できなくなると、todo のようにtoを伴う形の方が明確であり、to不定詞が一般的になりました。その結果、現在では不定詞といえば「to不定詞」を指すようになったのです。

ただ、現在でも名詞的な意味を残しているものもあります。
All you have to do is do….

おまけ

□名詞的用法
 名詞句であるから、主語・補語・目的語として用いられる。

□形容詞的用法
 ・先行詞がto 不定詞の主語
  There’s a lot of work to be done.
 ・先行詞がto 不定詞の目的語
  Would you like something to drink?
 ・to 不定詞に含まれる前置詞の目的語
  Marry needs a friend to play with.
 ・to 不定詞が関係副詞節のとき
  the time to go /at which to go /the way to do it/in which to do it
 ・to 不定詞先行詞と同格に働く
  I have no occasion to speak French.

「~べき」「~ための」と訳すより、動詞の「連体形」につけるとよい。「読む本」

□副詞的用法
 〈方向〉〈目的〉〈結果〉〈原因〉〈判断の根拠〉〈範囲指定、…する点で〉

・have O do ≠ get O to do
have O do が使役のときは、自分より社会的立場が同等、もしくは以下または業者などに自動的に当然~してもらう。
get O doは頼んで(説得して)~してもらう。

なお、この講義は直接生徒に指導するのではなく講師の英文法の背景トリビアとして参照いただければ幸いです。