私塾ねっと誌上句会「春夏秋冬」再開第四回

<谷村選&評>

春風に風船とられ泣く子かな
暖かな石にすわりてむすび食う

長江勝秋(神奈川県)

「春風に風船とられ」の表現が面白い。そしてその風船を目で追って泣く幼子の様がなんともほほえましい。平和な春の公園での風景か。

春デジャヴュ今この宵の懐かしく
羊の毛刈るショー見んと雨の牧

中村直人(神奈川県)

「デジャヴュ」日本語でいえば「既視感」、誰しも経験のある感覚だ。小生は夏の夕方波止場に立つと、瀬戸内で育った子供のころの夏休みの一景に重なる。

行く春や 会食止(や)まり 妻の愚痴
程々の歯応へをかしわらび餅

木内恭裕(徳島県)

わらび餅の原材料はその名の通りわらびの根のでんぷん質らしいのだが、いまだに納得がいかない。山菜のわらびとあのグミ感がどうにもつながらないのだ。「程々の歯応え」は、納得のいかぬ感触を説明して妙。行く春の句、他人事ではなく我が身につまされて講評できず。

全身を緑に染めて竹の葉湯
紅白の胡蝶群れたり花水木

谷村志厚(千葉県)

スーパー銭湯の露天風呂で竹の葉湯なるものを体験した。竹の若葉のエキスを抽出したという真緑の湯に身を染め、香しい竹の香に包まれ、初夏の風情を堪能した。

編集部よりお願い

次号は7月発行の夏号です。 投句はお一人3句まで夏の季語でお願いします。投稿は、谷村までメールでお送りください。締切は6月末日です、ふるってご投稿ください。