近藤 誠介(文化の森スクール・徳島)
この文章が出る頃には、ワクチンの二度接種が終わっていることと思います。という齢になりました。妻との会話で、“こういうわけで不定詞と呼ばれるのだ”と話していると、そういう話を書けばと言われました。自塾の講師のためにと書いたものですが、ひょんなことから、こういう形で連載させていただくことになりました。とはいえ、大学時代の専攻は会計学で、英語を学問的に研究したことはありません。そういう体ですので、皆様から、色んなご意見をいただければと思っております。
その一、英語は屈折語
言語の類型研究は、19世紀ドイツの(言語)学者、フンボルトにはじまります。人間の言語類型に分類すると、「屈折型」「膠着型」「孤立型」の三つに分けられます。英語は、インドヨーロッパ語族、ゲルマン語派、西ゲルマン語に属し、「屈折語」です。
屈折とは、be動詞がam、are、is、was、wereのように主語の人称や時制によって変化を起こすことです。449年から1100年ころまでを古英語といい、名詞、代名詞、形容詞、動詞、冠詞が複雑な変化をしていました。1100年頃から1500年頃までを中英語といわれ、古英語の複雑な変化が同じ形にまとまってきます。これを「水平化の時代」と呼びます。近代英語と現代英語は「屈折消失の時代」です。
ところで、日本語はウラルアルタイ語族のアルタイ語に属し、「膠着語」です。いわゆる、助詞や助動詞がついて文法範疇(名詞の格や動詞の時制)を表します。ただ、日本語をウラル・アルタイ語の一員と位置づけるための語彙の確実な一致が見つけ出されていないという問題も残っています。
中国語は「孤立語」で、語の文中の位置によって格などが表されます。文法のない言葉ともいわれたりします。
<ひとこと>日本語が論理的でないというのは、19世紀にできあがった比較言語学の、印欧語は完成した言語の理想型とする一方、膠着語は進歩の遅れた、尖った言語であるという考えに由来するもののように思われます。論理的ではないのではなく、論理的に、特に政治家は、しゃべらないということでは。
英単語の由来
英語の語彙は、50万語と言われていますが、それは以下の歴史によるものです。
5世紀末、現在のデンマーク、オランダ、ドイツの北部海岸地帯に住んでいたアングル、サクソン、etcと呼ばれるゲルマン小部族が、ブリテン島に侵入してきたときから、英語の歴史が始まります。その時にブリテン島に住んでいたケルト族は、スコットランド、アイルランド、ウェールズへと逃れていきました。ケルト語派も、印欧語族ですが、ゲルマン語派と違っています。
1. OE(OldEnglish):450-1100年
この時期の英語は、ゲルマン語が基になっています。
(例:eat、drink、house、hasband、wife)
9世紀から10世紀にかけて侵入してきた、スカンナビア人の古ノルド語に由来する説もあります。
(例:call、law、leg、root、window)
この時期の英語の代表人物:アルフレッド大王
2. ME(MiddleEnglish):1100-1500年
11世紀のノルマン人の征服から1500年頃まで、ノルマン征服の時代はフランス語が公用語とされたため、多くのフランス語に由来する語があります。
(例:liberty、conflict、marvel、clergy)
この時期を代表する人物は「カンタベリー物語」の作者、チョーサー。(また、いろんな時間にわたって、ラテン語が入っています。)
3. ModE(ModernEnglish):1500-
古英語と現代英語の対応<be動詞の屈折>
15世紀から17世紀のルネサンス、18世紀からの科学技術の改新など、大きな政治的・社会的変化により、大量の語彙が英語に入ってきました。