私塾ネット関東 春の研修会報告 [2022.6.19]

(文:中村直人)

2022年6月19日(日)午後1時より、私塾ネット関東主催の春の研修会が、季節外れに暑い東京御茶ノ水のTKPガーデンシティ御茶ノ水カンファレンスルーム3Eにて開催された。コロナ下ということもあり、会場とZOOMでのハイブリッド形式で行われる。テーマは「首都圏の公立高校入試分析から見えてくる子どもたちにつけておきたい学力」。

ご講演者は、(株)SILAB 白井孝明様、(株)SRJカスタマーサクセス事業部 田尻涼様、(株)進学研究会編集部部長 尾下敏史様 のお三方。白井先生を中心に、45ページ重量級の手元資料を駆使しての講演を進めていただいた。

□近年、公立高校入試において読解の重要度が高まっていると言われている点について。

実際にどれくらいのことが起こっているのか。なんとなく文字数が増えているなと感じている方たちに、その正体を具体的なデータに基づいて明らかする。またその読解の重要性の背景に何が影響しているのかを示していく。先に結論を言えば、高大接続改革あたりが中心にある。具体的に言えば共通テストで、これが新しいテストの学力観や作問の方法論を提示しているものと考える。共通テストを土台にして、今の高校入試にどんな影響が出ているのかを示していく。出題者側が生徒側にテストにおいて何をしてもらおうと考えているのか。

■2022年公立高校入試 結論・全体的課題
1.ちゃんと理解しろ! 2.ちゃんと読め! 3.読んだら考えろ!
身もふたもないが、✓全国的・全教科的なボリュームアップ傾向✓読解重視+情報化による思考判断力(+記述力)重視✓~条件反射で解くことからの脱却等が根底にある。
▶読解力を中心に【思考力・判断力・表現力】をバランスよく求める流れがある。
■なぜそうなった?
読解力・情報処理力は、現代社会が求める実践的学力であるから。
✓大学入試で求められる~「共通テスト」の傾向
✓高校の教科書が変わる~「情報Ⅰ」必須化・「論理国語」登場ほか
✓高校入試が変わる~中学入試も変わる 特に「難関向け」部分で

ここから首都圏、東京・神奈川・千葉・埼玉の2022年度入試の各教科のデータをもとに詳細な解説がありましたが、紙面の制限もありとても書けませんので省略。首都圏では国語の文字数が増加している。例えば、3年前との比較で、神奈川17310→19047、千葉8581→10662、東京14771→15059、埼玉11696→12260。解くにあたって読み返す分量を勘案し1.5倍とすれば、一番少ない千葉でも作文用紙26枚分に当たる。SRJさんによれば、様々な試験で試験時間全体の約6割が思考+解く+記入にかかる時間ということだ。千葉の国語で、①読書速度500文字/分※日本人の平均スピードですと試験時間50分で約12分足らず。②読書速度800文字/分※成績中・上位者に多いスピードですと、ぎりぎり。③読書速度1200文字以上/分※成績上位者に多いスピードだと7分余裕。ボリュームアップした文章の意味を取って速く読む力が求められている。国の新指導要領では、思考力・判断力・表現力を新しい時代を生きる力としている。表現力のためには思考力・判断力が必要で、良い思考・判断をするためには、多量の情報を速く正確に読み解くインプットする力、速読力・読解力が基本となる。SRJでは、それらに対する各講座が用意されている。最後に6月22日新刊の「1分読みトレ!」という速読解トレーニングの本を紹介された。

共通テストにおける英語・国語の難易度がどこから来るか。その分析。2年間の分析から、英語リスニング以外は前年の類題はほとんどないなど、脱パターン化の傾向や2025年大学入試の予測、高校受験に共通入試が影響している点など具体的詳細に話される。

特に首都圏では非常な影響力を持つ進学研究会のVもぎであるが、その作問の仕方や作文の採点基準について尾下様が本日の話と関連させて話される。当然各都県の入試問題を分析・予想して模試の作問をするが、最初に解答ありきとのこと。そして白井先生が話されたと同様な設問・選択肢の種々の難易化テクニックを使い作成されるようだ。その際ポイントを明確にして採点のしやすさも考慮するとか。作文の採点も平成27年の東京の入試で開示された部分点の基準を参考にしている。Vもぎではどうやって基準を決めているかも話されたが、これは書かない。Vもぎの問題の2つの解答例を、条件・注意事項をふまえ会場の参加者に採点させる。尾下様の採点例も公表。それに対しての会場の質問に答える。

共通テストを受けたものは、一様に時間がなかった・しんどかったと言う。設問・選択肢の複雑化・非パターン化が原因であろう。読解の対策として白井先生は、自分でルールを決めて重要な箇所・情報に印をつけること、設問を音読することをすすめられた。そして、ご著書の「究極読解」や夏に出る「読解入門」などを紹介され、講演を終わられた。