賛助会員紹介:自由学園中等科・高等科 (東京都東久留米市)

本物の学びと「よりよい社会」の実現

女子部校長 更科 幸一

1921年、教育を通じて新社会の実現を目指して創立されたのが、自由学園の始まりでした。より良い社会をつくるための学校を目指しており、毎年入学式では新入生に「あなた方は自由学園をよりよくするために入学を許されました」という言葉が送られます。学校という社会をよりよくする、社会の一員としての自覚をもって、新生活を迎えてもらうためです。

■本物から学ぶ

自由学園の本質的な学び支えているひとつが、緑豊かで広大なキャンパスです。幼稚園児から最高学部(大学部)生までが同じ門をくぐり、4000本以上の樹木、開放的な大芝生、菜園、小川。校内に広がる自然は“本物”です。さらに、校内のみに留まらず、埼玉県飯能市など国内3箇所にある山林や那須の農場も学びのキャンパスです。その中でも、飯能市にある名栗植林地では市や地域の方々と生徒たちの手で70年以上にも渡って森林づくりを続けてきました。植林・育林・枝打ち・間伐して、麓の製材所で加工した後に自分たちで生活の中で使う物の材料にもなっていきます。SDGsの考え方が広まり、環境問題も注目を集めるようになってきましたが、育てた木を暮らしに活かすことも、育てた野菜や豚の命を頂いて自分たちで調理をして食べることも、人と自然の命のつながりを本物を通して学んできた自由学園の生徒たちは、持続可能な世界の土台が自然の中にあるという事を本質的に理解しているのです。様々な社会課題と向き合うために必要なこうした本物の体験が、自由学園では100年前から行われてきたのです。

■隣人に思いを寄せる

コロナ禍で自身の生活も制限される中、より助けを必要としている人たちに思いを寄せた生徒たちが、池袋でホームレスの人たちにおにぎりを配る活動を始めました。他者のために動くことができる自由学園のDNAは、脈々と受け継がれてきたものです。創立から2年後に起きた関東大震災。夏休みを終え、新学期が始まる予定でしたが、始業式を遅らせ救援活動を行っていました。集めた衣類で布団を縫い、休業中の小学校で臨時授業。2011年の東日本大震災の際も、お手製のパジャマやお菓子を持って仮設住宅を訪れ、養殖作業の支援も行ってきました。時代が変わりゆく中で、その時に必要なことを自分で考え行動する、という姿勢が、こうした主体的な活動に現れています。またそれが「自分さえ」ではなく、隣人を思いやることができるのも自由学園の学びが培ってきたものであり、100年継承されてきたものです。

■伝統の100年と新たな100年

「よりよい社会をつくる」ことを考え続ける支えになっているのが、「自治」です。食事作り・食器洗いに始まり、行事の企画・運営、樹木の世話に至るまで、生徒の自治を尊重しています。自分を生きるということは、自分の生活を自分ですることだと、創設者は考えていました。そして、それは自分ひとりではできないため、協同社会の必要性を訴えていたのです。友人、クラスメート、学校など、大小さまざまな社会の中で、時にはぶつかりながらも、根底にある「よりよくする」ということが、社会性を身につける訓練となっています。学校生活の中で、様々な能力や性質の人が協同することには、たくさんの学びがあります。その経験が、時代ごとの社会課題に向き合う糧となり、競争ではない協力の新しい社会をつくり出す原動力となっています。

大切にされてきた伝統が故、形式の継承にこだわり続けてしまった部分もあると思っています。創立100年を迎えたここで、創立者が当初謳っていた「国際共生」に立ち返り、自由学園が次の100年に掲げるのが「共生共学」です。その一歩として2024年に男女共学を予定しています。自分らしく生きるために、性別や年齢、国籍などを超え、共に生きる社会の実現を目指します。100年経っても在り続けられるのは、自己変革できる強さを持っているからだと思います。「なぜ、どうして」と常に疑問や違和感を持ち、たくさんの体験が育てた自分らしさで、これからも「よりよい社会」をつくります。

自由学園中等科・高等科