特集・コロナ禍と塾①当塾の取り組み

エリア東北  柿崎 純 (個別指導Axis観光通り校)

1.はじめに
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下コロナと表記)の拡大防止のため、青森県内の学校も御多分に洩れず、3月2日から5月23日までの間、臨時休校や分散登校の措置を講じました。学校の動きを見ながら、当校でも様々な対応を行っています。これから時系列で説明します。

2.コロナを他人事として捉えていた3月上旬から中旬まで
コロナの感染者が日本で初めて確認された日は、令和2年1月16日です。この時点での当校は、コロナを他人事のように捉えていました。青森県内ではまだ、発生していないから大丈夫だろうと。そのため、上述の3月2日からの休校要請にも関わらず、当校では通常通り開校していました。会員生保護者からの要望や、3月10日の青森県立高校入試、3月12日以降の国公立大後期試験が行われることも開校の理由に挙げられます。
 また、2月中旬から3月中旬まで、例年通り春期講習の広報活動を行っていました。年々広報活動からの新規問い合わせが減少していたため、今年こそ挽回をしたいという思いが強かったです。しかしながら、コロナ禍が問い合わせの減少に追い打ちをかけたことで、結果的に2月~4月までの問合せ者数は、創業以来最悪の2名となってしまいました。ただ、広報活動をしたことに対しての後悔はしていません。今後の糧としています。

3.コロナを自分事として捉えた3月下旬から4月下旬まで
 青森県内で初のコロナ感染者が判明したのは、令和2年3月23日。青森市内での初コロナ感染者判明は、4月3日。ただ、4月3日の段階でも他人事のように捉えていました。その気持ちに変化が生じたのは、すなわち、コロナを自分事として捉えるようになったのは、4月8日です。この日に、某学校が急遽臨時休校となったのです。その学校は、コロナ感染者の子が在籍すると同時に当校の会員生が在籍する学校であったからです。学校の臨時休校に従い、当校の会員生でその高校に在籍している者全員に対し、自宅待機を命じました。
 このことを契機に、石弘之 (著)「感染症の世界史」(2018年/角川ソフィア文庫)を購入して、感染症について学習しました。感染症がどのように発生し伝播したかがよく分かりました。そこで、他業種でのコロナ対策を調べながら当校なりのコロナへの対応策を考え、実践することにしました。

4.現在の当校におけるコロナ対応策
現状、コロナに有効な薬やワクチンがありません。そこで、当校ではマスク着用の義務化や、アルコールによる手指の消毒の徹底、次亜塩素酸ナトリウム液による備品類の消毒を徹底しています。特筆したい対応策としては、個別指導ブース全席と、面談スペース、休憩スペースに飛沫感染防止シートを設置していることです。また、授業時や面談時のフィジカルディスタンシング(身体的距離の確保)を心がけています。これらの対応を確実に行うことで、当校に対する安心感を示すことができればと思います。

エリア関東  宮澤 歩 (秀英ゼミナールSS教室)

新型コロナウイルス感染症対策のために3月から一部の自治体を除き学校が一斉休校になりました。それに合わせるようにして私たち塾もこの社会からの要請にどう対応するかという選択を迫られました。当初のポイントとしては、対面授業を続けるのか、学校と同様に休校にすべきなのか。月謝等の収入の確保のためには授業を続けざるを得ないが、それにはどうすべきか。何かあった時の風評被害が怖いなどであったと思います。そして4月に7都府県を対象にした非常事態宣言が出されると3月中に濃淡があった対応が一変したように見えました。法的な制約を受ける学習塾は限定的なため、千葉では私たち中小塾は必ずしも休業を強制はされませんでしたが、現実としては対面授業を回避するための方策を練り、行動変容を迫られました。具体的には、3月中と同様に集団感染が発生しやすい傾向のある「密閉空間」「密集場所」「密接場面」(三密)が重なる状況をつくり出さないように、通塾を要する対面授業などを最大限に控えて、リモート授業を行うなどの対策を各塾が行いました。

こういった状況の中、私の塾では、できるだけ生徒の学習環境に負荷(例えば、新しく何かをそろえなければならないとか、新たに契約をしなくてはいけないなど)をかけないように講座の設計をしました。普段から生徒はLINEやYouTubeなどのツールを使用していたので、生徒・保護者との連絡・動機付け・元気づけにはLINEを、未習範囲などの講義はYouTubeでの動画配信での二つを軸におきました。また、学校の長期休校による学習習慣の維持対策のためオンライン会議サービスのZOOMを導入しました。9時~12時の間はオンライン演習室という名前でZOOMを利用した勉強時間の確保をしました。生徒たちは朝ZOOMにアクセスをした後、LINEグループを利用して今日の学習予定を連絡します。(ここでは、みんなも頑張っているという一体感を出すために敢えてグループを利用しています。また、質問もLINEグループを利用することによって、自分もわからなかったものが質問に出ていたりすると、一緒に解説を求めたりすることができます。)午後からは、生徒が時間を分散して課題を提出に持ってきます。提出は週1回こちらで学年毎に曜日と時間帯を指定しました。塾で用意した提出袋に課題を入れて持ってきたものを受け取るだけですが、短時間でも対面することにより気分転換もでき、生徒の様子を知ることもできました。受け取った課題は翌日の午後までには次回までの課題と、提出されたものに添削・解説の赤を入れて各生徒の家のポストに配達をしました。そして夕方から夜にかけては出した課題の解説動画を撮影してYouTubeにアップするという作業をしました。また、好評だったのが「30日チャレンジ」です。毎日朝、夕15分ずつ国語・英語・社会・理科の中から自分で決めた教科書を音読するというものなのですが、学習のリズムが付く、予習・復習になる、読むだけ・聞くだけなので始めやすいというのがポイントだったと思います。これもLINEで読んだ教科やページ数を共有することでお互いの刺激になっていました。

約3か月にわたる学校休校・外出自粛要請など今までに私たちが経験したことのない情勢の中で、「学校は何もしてくれない・プリント課題を出すだけ」「学習の遅れ」「学力低下」などと不安をあおるような言動をする塾が現れる一方で、「オンライン朝の会」を開いて地域の子どもたちの元気づけ・勇気づけを行う有志のお母さん方も現れました。私たちも教育機関をうたい、教育の専門家を自負するのであれば、学校にできないことをあげつらい、他を出し抜くことで不安を解消させるのではなく、塾でできることで学校教育を補って、情報や学習の機会を提供して地域の子どもたち、自塾の生徒・保護者を笑顔で幸せにしたいと思いませんか。「コロナ禍と塾」というテーマをいただいてそんなことを考えました。

エリア四国  丸橋 俊之 (丸橋塾)

コロナの影響は当然ながら四国にも及びました。四国は4月の中旬頃に感染者のピークを迎えました。香川県も多くの塾が教室を閉鎖しました。私の塾もオンラインでの対策を迫られましたが、もともと私がITにうとかったこともあり、教室を閉鎖した1ヶ月の間、zoomによるオンライン自習室を開設するのが精一杯でした。今回、ふとしたことから大学のオンライン対応を調べましたので、ご報告いたします。

大学のオンライン対応には2つの柱があります。オンラインのライブ会議システムとLMS(学習管理システム)です。ライブ会議システムは皆さんもご存知のzoomに代表されるものです。LMSとは、オンラインで学習教材の配信、課題の提出、小テストなどを行うプラットフォームです。LMSは2010年代前半から多くの大学が既に導入しておりました。まずライブ会議システムですが、東大、京大、関関同立大など多くの大学がzoomを採用しており、zoomのシェアがかなり高い印象です。他に有名なライブ会議システムとしてはwebex、マイクロソフトteamsがあります。teamsはマイクロソフト社のシステムですので、ワードやエクセル、パワーポイントに親和性が高いという利点があります。次に、LMSでは、大学の採用はmoodleとmanabaに二分されているのが現状のようです。多くの大学がコロナよりかなり前からLMSを導入していたことは正直驚きでした。

塾としてオンライン授業に力を入れるとして、結局どのシステムを使うべきなのか?という点ですが、大学のシェアが示すように、今のところzoomが第一候補のようです。操作のシンプルさ、参加のハードルの低さ、参加者のプライバシー保護(背景のボカシ)などでzoomに優位性があります。また、以前指摘されていたようなセキュリティの脆弱性もどんどん改善されているようです。私自身「zoomでまともなオンライン授業できるの?もっといいソフトあるんじゃないの?」と思って調べましたが、勉強不足でした。zoomでやれることをしっかり勉強しようと思っています。

JAC 千葉学習塾協同組合の取り組み エリア関東 柳田 浩靖 (日米文化学院)

千葉学習塾協同組合にとって、「スクールフェア」は設立以来30年以上に渡り毎年続けられてきたイベントである。これにより、私学と組合塾がつながることが出来、フェア終了後の懇親会でのふとした話から様々な恩恵を受けることもあった。また、組合運営のための貴重な収入源であったことも間違いない。「スクールフェアなくしては、塾人としての今の自分はない」、と言い切れる程、自分にとっては限りなく大きな意味を持つイベントなのである。

そして、自身が実行委員長になり4年目に起こったこの騒動。今年は新たな実施会場として神田外語大学を選定し、今までにない、全く新しいスクールフェアの形を模索している最中であった。「なぜ、今年に限って…」との思いはある。しかし、昨年度は開催予定日に超大型の台風が直撃するとの予報に対し、早めに延期の決断をしたことが功を奏し、参加校の皆様からも評価を頂いていた。「果たして10月までに事態が収束するのか?」と考えたときに、そのイメージは全く湧いてこなかった。そこで、早々と4月の理事会において中止を決定した。

しかし…、設立以来続いてきたこのイベントを、そんなに簡単に中止にしてしまって良いのか?組合の財源はどうする?それより何より、スクールフェアは自塾の生徒を始め、参加する子供達の人生を変える程の意味をも持つものではなかったのか?と考えたときに、このまま、何の代替案を出さないままで終わる訳にはいられないだろう、というのが率直な気持ちだった。そして、困っているのは私学とて同じなのでは?ということに思い至った。今まで通りの生徒募集活動はままならない。県内の現場の話を聞く限り、思っているほどIT化も進んでいない…。

と考えたとき、逆に今回の一件で、家庭でのオンラインへのハードルは一気に下がっていることは肌で感じていた。「オンラインでスクールフェアをやったら…。」とイメージしたとき、今度は上手くいくイメージしか湧いてこなかったのである。かくして、限定40校としたものの、10日もかからず、あっという間に募集枠は埋まった。あとは成功へのイメージを実行に移すのみである。都内や石川県(国際高専)からの参加もあるので、是非、皆様もオンラインスクールフェアにご参加下さい!