大学の淘汰がはじまった
2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が生まれました。2024年秋、東京医科歯科大学と東京工業大学が統合し、東京科学大学(仮称)が誕生する予定です。一方、全国各地で「募集停止」となる私立大学があらわれており、日本の大学の統廃合が本格的にスタートしたと言わざるをえません。
いま、日本の大学に何が起きていて、これからどうなっていくのか、今回の企画では、そんなご報告をしていきたいと考えています。
学習塾と大学の接点を
「自分の教室には、高校生も大学受験生もいない」という読者のみなさまも多いでしょう。けれども、みなさまの教室で学んでいる塾生の大半が、大学に進学します。また、大学情報の提供を学習塾に求める保護者も少なくないでしょう。この企画では、大学が置かれた厳しい状況だけではなく、子供たちの可能性を広げるような大学の取り組みなど、あかるい話題も積極的に紹介していきます。記事を読んで、たったひとつだけでも毎日の指導に役立つ情報をお届けできたら上出来、ということでご容赦ください。
また、学習塾に関心を持つ大学が増えていますが、どのようにアプローチしたら良いのかわからないという相談を頻繁に受けるようになりました。学習塾も大学も相互に利用できる教育資源を持ちながら、接点がない(接点が見つからない)のが実情なのです。
「塾大連携」。私たちアロー総研では、学習塾と大学をつなげていくさまざまな提案をしていきます。みなさまのご意見を、ぜひお聞かせください。
300校は知らない大学
文部科学省の発表によると、2022年度、日本には国公私立合わせて、800を超える大学があり、約300万人の学生が学んでいます。
昭和から平成に変わった1989年度の大学数は約500校。平成と令和の間に300校の大学が新しく生まれた計算です。日本にある大学のうち、半分近くの大学が、学習塾で教えるみなさまが高校生の時には存在しなかった大学、つまり名前も知らない大学なのです。
学生数が7万人というマンモス大学から学生数50人というミニ大学まで大学は多種多様です。
大学で教える内容も多様化しています。最近の流行は「データサイエンス」。教員陣に脳科学の専門家などを加え、人工知能を開発するための、ガチ理系のデータサイエンスを学ぶ大学もあれば、イタリアンレストラン「サイゼリヤ」の売上げデータを分析する文系の大学もあります。音楽とデータサイエンス、食事とデータサイエンスなど、データサイエンスの分野がものすごい勢いで広がっています。こういった大学の「いま」を、ご存知でしたか?
「日本の大学は多すぎる。名前も知らない底辺大学は消えてしまった方が良い」と乱暴なことを言う人も少なくありません。ところが、伝統校や名門校と呼ばれる大学の講義が古臭く、新参者の大学の方が教職員も若々しく、新しい教育づくりに取り組んでいるというケースは珍しくありません。
大学情報のアップデートを
小中高で新しい学習指導要領がスタートし、2025年年度大学入試から、新指導要領に対応したものに変わります。大学の「入口」は大きな変化をしようとしているわけです。また、大学入学後の「中身」である授業やキャンパスライフも、おそらくみなさまの時代とはまったく違うものに進化しています。そして、大学卒業後の進路、「出口」の状況も新時代に突入しています。めざすのは、大学情報のアップデート。入口から出口まで、いまどきの大学がわかる記事をお届けしていきます。
箱根駅伝
100回を迎える箱根駅伝。今年の予選会は全国の大学が出場可能に。
アロー教育総合研究所
所長 / 田嶋 裕(たじま・ゆたか)
1969年生まれ。95年早稲田大学法学部卒業。大手予備校、ラジオ局報道部記者を経て、アロー教育総合研究所に入所。大学入試の調査を担当。城西大学外部評価委員。