<谷村選&評>
いつとなく家族の集う炬燵かな
凍月や川面に浮かぶ鳥の影
木内恭裕(徳島県)
我が家には堀炬燵がある。子どもたちが巣立った今、「いつとなく」の句の世界も懐かしいものとなった。昨年3月から自宅で小さな家庭塾を開いているが、その教室の一つが「堀りごたつ教室」。堀り炬燵を知らぬ世代の子たちが嬉々として足を入れている。
綿入れにつつまれしとき母想う
路地裏のケンケンポンと焼芋と
長江勝秋(神奈川県)
ケンケンは片足飛び遊び全般で使われる全国共通語。昭和の時代日本の町や村の路地で、昭和の子どもたちが飛び跳ねていた。焼芋の季語が「旨く」調和した。
亡き母の墨する妻や初硯
花撮れば黄花にもぐる冬の蜂
中村直人(神奈川県)
「花撮れば」の句は今号の表紙写真撮影の場面であろうか。冬の蜂の動きが描写されたことで黄花(パンジー)の静止画が動画に進化した。
冬日差す障子の幕の影絵かな
寒稽古幼き子等が輝けり
監物一男(埼玉県)
俳句を始めて半年の監物さん、日々に上達である。自塾を閉じられてから、今は小学校の現場でも指導されておられているとか。「寒稽古」の句、子どもを見守る視線が温かい。
新春に駆けて箱根路天下の険
新春に賭けて本命外しけり
谷村志厚(千葉県)
「新春にかけて」シリーズで遊んでみた。3年ぶりに箱根大学駅伝の復路応援で日本橋に出かけた。以前は同窓の仲間と日本橋上で旗を振るのが1月3日の行事だった。今年は単独行動だったが、警備上の判断か日本橋上での応援は禁止されていた。
編集部よりお願い
次号は5月上旬発行の春号です。 投句はお一人3句まで春の季語でお願いします。投稿は、谷村までメールでお送りください。締切は4月末日です、ふるってご投稿ください。