表紙の花こ・と・ば(76号)

シクラメン(サクラソウ科シクラメン属・地中海地方原産) 

雪中のシクラメンとはなかなか素敵な構図の一枚。写真担当の中村さんが今年の初雪の翌朝にものにしたショットだ。

シクラメンで思い出すのは、我々の世代では布施明の「シクラメンのかほり」ではなかろうか。1975年のヒット曲で、作詞作曲はシンガーソグライター兼バンカーの小椋佳。この曲には面白い逸話がある。

この曲がヒットするとシクラメンに香りはないとのクレームがついた。しかしながらこれが園芸家の探求心をそそった。試行錯誤の末1996年、埼玉県の園芸研究所が芳香を発するシクラメンの育成に成功したのだそうだ。花色の違う「孤高の香り」(紫)、「麗しの香り」(ピンク)、「香りの舞い」(濃紫)3品種を種苗登録したとのことだ。

この歌のヒットがなければ、香りのあるシクラメンはこの世に存在していなかったであろう。和名のカガリビバナ(篝火花)はその花弁のイメージからであろう。

だがもう一つブタノマンジュウの別名があるそうだが、これはいったいどうして名付けられたものであろうか。清少納言なら「カガリビバナいとおかしされどブタノマンジュウといふいとわろし」と嘆かれたことであろう。 (志厚)