私塾ねっと誌上句会「春夏秋冬」再開第三回

<谷村選&評>

春浅し蜜柑の甘さ身に滲みる
春寒し猫は寝床を抱きにけり

長江勝秋(神奈川県)

愛媛のミカン農家出の小生としては蜜柑の句は採らざるを得ない。蜜柑の酸っぱさではなく甘さが滲みたとあるのが嬉しい。生産者は糖度をいかに上げるかに苦心する。

初雪をかぶりて花の耐えて咲き
加湿器の湯気を透かして寒の月

中村直人(神奈川県)

初雪の句、表紙写真の撮影時に詠まれたもの。普段から表紙の花の写真に気を配られておられるそうだが、雪を冠ったシクラメンは絶好の被写体であり句材となった。

書道展見終えてからの宵戎
橙(だいだい)を飾りて古家の晴れ晴れし

木内恭裕(徳島県)

1月9日から11日にかけて十日戎があり、10日を本戎、前日9日を宵戎と言うらしい。この十日戎は関西を中心とした戎(恵比寿)様を祀る商売繁盛・五穀豊穣のお祭り。木内さんと同じ四国育ちの小生だが、愛媛の南端育ちの当方は戎祭に縁遠い、ましてや関東の方には耳なじみの薄い行事ではなかろうか。

梅の枝に結ぶ願いや受験生
豆まきの声一斉に「コロナ外」

谷村志厚(千葉県)

初詣の祈願があらたかになる時節である。受験の神様といえば天神様、天神といえば菅原道真そして梅。天神様と梅の縁は、道真公の「東風吹かば匂いおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ」に由るものであろう、たぶん。

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次号は5月上旬発行の春号です。 投句はお一人3句まで春の季語でお願いします。投稿は、谷村までメールでお送りください。締切は4月末日です、ふるってご投稿ください。