<谷村選&評>
薄くなる我が頭髪よ秋の暮れ
あの花もこの花も咲く秋の原
長江勝秋(神奈川県)
今号の表紙に掲載した秋の花は勲章菊(ガザニア)だが、秋の原に咲き乱れる花といえば、なんといっても秋桜(コスモス)だろう。さだまさしの楽曲で山口百恵の歌唱、昭和っ子の心をつかんだこの曲のヒットで、コスモスの秋の花としての評価が定まった。
引っ越しの部屋片づけて秋深し
子等の顔浮べて酢橘(すだち)の荷を造る
木内恭裕(徳島県)
小生の生まれ育ちは愛媛なので、子等の顔の句で酢橘を蜜柑に代えるとそのまま望郷の句となる。同じ四国、同じ柑橘系でも名産がスダチとミカンと異なり、徳島と愛媛のややすっぱい関係が垣間見れる。四国と言う狭い島国の土地柄というものではなかろうか。
あ来ぬ人を待つほの暗き夕月夜
鉦叩(かねたたき)ふと音乱るる軒の下
中村直人(神奈川県)
チンチンチンチンチンとリズミカルに音を刻む秋の虫が鉦叩き。室内に紛れ込むこともしばしばなので、音色が軽妙なわりに嫌われることも多い。「ふと音乱るる」は、鉦叩の単独コンサートで演奏の最中にドタバタと入室してきた無粋な観客(作者)のせいであろう。
身を削る鮭の遡上に、ファイト
子等の声絶えて寂しき暮の秋
谷村志厚(千葉県)
中島みゆきの楽曲に「ファイト」というヒット曲がある。その一節に「ファイト、冷たい水の中を ふるえながら のぼってゆけ」というくだりがある。苦悩する女の子を鮭に例えて励ましたものだが、この曲は小生のような高齢爺様の身にも沁みる。
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