塾・現場報告 一台の顕微鏡から!梶原 賢治

四谷大塚全国統一学力テスト、9年間連続全国一位達成。(トータル11名延べ13人)

梶原 賢治(朝日学習館・埼玉県)

前回2019年11月実施回では、年長全国一位1名。小1算数全国一位1名、小1国語全国一位1名、小2国語全国一位1名。全国一位同時4名達成。高学力のお子様の親御さんの中には、読み書きそろばんを要請しない方もおります。それもありいろいろ妙なことをしています。全国一位の生徒さんの中には、私立小の生徒さんが3名おりますので中学受験がありません。毎回のテストで算数130点以上の生徒さんは、御三家合格レベルと推定されます。算数の学力に関して言えば、同テスト150点満点中、120点以上の継続で、中学校の教科書は、読んだらわかる読解力・思考力と思われます。興味関心の育成が、大きなテーマです。様々な、得点者を見る中、得点では測ることの出来ない多様な個性のリアルな把握とそれへの便乗が出来たらと思っていますが右往左往の日々です。このような発表の機会を頂きまして、心より感謝申し上げます。

子どもと共に、デジタル顕微鏡で様々な微生物の世界をのぞき込むまで知ることのなかった、微生物の世界は、小さな大宇宙だった。たった数平方ミリメートルの世界が、多様な生物の世界だった。

鹿島神宮近くの田んぼの隅の水たまりからペットボトルで採取してきた濁った水。その一滴をプレパラートにのせて顕微鏡を覗いてみると、数えきれないほどのミドリムシ・ゾウリムシ・ラッパムシと思われる輝かしいうす緑の微生物の世界であった。

ペットボトルの外から見るボトルの底の濁りは、想像するに活発に運動する無数の生き物の楽園であろう。100ccほどの濁り水の中にいる、微生物の数の膨大さに思いをはせると、私たちが、菌類・微生物・植物・動物という広大無辺の生態系の中で相互に依存しながら生きていることがリアルに感じられてくる。その世界の一点に明かりを当てることで、子どもたちと共に自然の尊厳と奥行きの深さに触れることが出来たらと願っている。

授業が始まる前に、教室の隅のデジタル顕微鏡に被観察物を置き、その小さな明かりを点灯したままにしておくと、教室に来た子供たちが、デジタル顕微鏡の前に集まってくるのは興味深い。田んぼの隅の一滴に、「ワーいるいる」と歓声を上げる子ども多々いる。中には、近所で子どもたちが拾ってきた様々な火成岩の小片を次々と取り換えては代えては、一通り満足いくまでのぞき込んでいる子どももいる。

年長生Mちゃんが、茨城県鹿島北部の砂浜の砂を、顕微鏡で見るため一階の園児の教室から二階の小学生の教室に上がって来た。全体としては、灰色の砂粒は、デジタル顕微鏡で見ると、透明(石英)、白(長石)、黒(黒雲母)、オレンジ色(不明)などに輝いている。Mちゃんは、「わーきれい」と歓声を上げながら覗く。そのとき描いた絵が、左の絵である。感動だ。

石とデジタル顕微鏡のつながり

コンクリートで舗装してない駐車場であれば、六種の火成岩、流紋岩・花こう岩, 安山岩・せん緑岩, 玄武岩・はんれい岩を見つけるのは、川口駅から離れている私の教室の周囲では、困難ではない。中でも花崗岩は、虫眼鏡でも造岩物質(石英・長石・黒雲母など)を簡単に分別できるのは楽しいようだ。数名の子どもたちは、時々興味深く目に映った石を教室に拾ってくる。それらを虫眼鏡やデジタル顕微鏡で見る非日常性は、彼らにとって興味深いことのようだ。何かを日常的に見続けることが、次のステップに進むキッカケになったらと願っている。

ミジンコからミドリムシへ

ミジンコは,飼い始めて3年以上になる、ミジンコからミドリムシの観察への道のりは、長かった。教室でミジンコを飼っていることは、生徒全員が共有し、現在は、ミドリムシ、ゾウリムシ、ラッパムシ、ツリガネムシなどの微生物の世界に向かっている。長い間飼うと、奇妙だが、ペットのように愛着がわいてくる。

デジタル顕微鏡の倍率に飽き足りなくなり、昨秋に、光学顕微鏡を手に入れた。三方向からLEDの光があたり、画像は、明るく鮮明である。覗いてみると、ミジンコしかいないと思っていたペットボトルの水は、倍率を600倍にした光学顕微鏡で覗いてみると微生物の大集団であった。レンズの先で、無数の微生物が生きて動いている光景は、デジタルにはない存在感で迫ってくる。その一滴を、ティシュでふき取り捨てると、生徒が「あっ、殺した」と一言。

生物など、後にも先にも勉強したことがない身の上、顕微鏡が自由自在に扱えたならばと思う日々は続いている。デジタル利用の学習が、学習の世界を席巻していくようにみえるが、デジタルの豊かさを決めていくのは、youtube同様アナログの豊かさであることを痛感する日々である。

望遠鏡を利用すると見えない星が見えるように、道具が変われば、世界の見え方が変わる。教室の遊び道具に顕微鏡はお勧めである。