特集・コロナ禍と塾③ZOOM座談会

「コロナから学んだこと‐オンライン学習指導の今後」

6月19日、金曜日の10時からと言う普段なら集まることが難しいと思われる日程の中、鈴木正之先生、田中宏道先生、渡辺浩先生、柳田浩靖先生にzoom上でお集まりいただき、zoomを用いた遠隔授業についてお話しいただいた。(以下、敬称略)
報告:センター事務局長 中村 庸彦

Q:zoomを使った今や今までの状況は いかがですか?

▶田中:今週から通常の時間に戻した。中1、中2は塾に来てもらっている。夏期講習ができない分、中3は週3から週4にして2日はzoom、残り2日は通塾。中1、中3は喜んで来てくれている。中2は通塾が面倒に思っている生徒もいる。7月8月は講習ではなく、通常授業を続ける。中3は土日や他の時間を使って多めに授業をする。中1、中2も増やせたら増やして授業料を少しアップさせたい。休校期間中は小学生は午前中に、中学生は午後に授業を通常よりも長く行った。その他オンライン自習室も開設した。小2、小3は授業ではなく、学校の課題をやる自習時間にした。友達の顔が見られて楽しそうであった。画面上で縄跳びをしている子もいた。お家の方も子どもから手を離せたのでよかったのではないか。

▶柳田:対面授業の中止を決める前からzoomを中学受験コースでは始めていた。思った以上にスムーズに授業が出来たことで、他の学年でも十分使えるという手応えを感じていた。一斉休校後は、すぐにzoomに移行。周囲の塾ではオンライン授業を開始しておらず、zoom授業が付加価値になり、生徒も乗り気で、保護者から感謝の言葉も頂けた。4月に入り飽きがでた。オンライン授業の課題はやはり授業内容の定着度を測ること。休校が開けて塾内のテストをやらせると、特に学年が下がる程に取り組みの甘さが露呈した。授業自体はうまくいっていたと思うが、休校期間中の内容はもう一度繰り返しが必要。
休校が明けて、半分は通塾、半分はzoomでの対応。zoomの様子をプロジェクターで映して、塾と在宅受講者お互いの様子を見せたら、面白がってくれた。プロジェクターやスクリーンを買い足したが、来週からは通塾に戻す。しかし、部活が18時までのため、夏期講習も夕方から組めず、市によって休みが1週間ずれるので、例年と同じ時間数にするには休みなしで夕方からびっしりの時間割。子供にとっては学校+講習毎日だと暴れ出すのでは?ご家庭にとって、塾は月謝を取りたいだけだろと思われてしまうのか。カリキュラムもあるから短くするのも・・。

▶渡辺:3月の段階では保護者の声はコロナ感染の危険ではなく、学校が閉まることへの心配が多いので、春期講習までは通常。前からアルコール等のインフルエンザ対策として除菌をよくしていたので、それにプラス換気と手洗い励行で対応。4月7日の緊急事態宣言の発表を受け8日から授業をストップ。このままではいけないとzoomを授業で使っていこうかと思ったが、抵抗を考え、まずはオンラインに慣れさせる事に。ネット環境を聞いたところ、数件環境が整っていない家庭があったので直接電話して、調整した。4月第2週からスタート。小学生低学年では親御さんがテレワークで家にいた時は手伝ってくれたが、テレワークが終わって一人では無理。中学生はレクチャームービーを配信し、週に1回質疑応答。第4週は5月7日に緊急事態宣言が明けるとの話だったので、通塾に向けてG.W.も潰してzoomで授業をやったが、延長になり、それ以降も引き続きzoom。ただ時間を伸ばす、日数を増やしてなどお得感を出した。6月1日からの解除で、13日までの2週間、通塾とzoomのどちらでもいいですよとしたら、1割が面倒くさいからzoomを希望。今回のzoomではサボる子はラッキーと思い、やる子は早く来たいと思うことが分かった。やっていた子とサボってきた差が出てきている。近所の塾を見ると完全に密になっている。7月から自習を開始時するのでパーテーションやビニールシートを吊るして対策をする。

▶鈴木:3月が入塾のメインの時期だから、大変だった。4月の問い合わせ0は40年間で初。ただ古株の生徒とやっていたので、zoomの授業は成立した。以前からオンラインへの根回しができていたので、4月8日からスパッと切り替えた。これはいいぞと思っていたが、普段の一斉授業では子供達ができないところを探って、どうすればいいか対応を考えていた。zoomだと伝えようとする方が多い。こちらが生徒を受け入れようとする授業だったのに、伝えようとする授業になっていて、案の定うまくいかない。

▶渡辺:授業は五感を使ってやるもの。五感を使って子供の姿を見ている。

▶鈴木:中3はコロナ明けでは一斉授業に入って来られない。保護者にはマラソンの折り返しまで進んでいるので、今後は追いつけない、と話していたが、蓋を開けてみると出来てないので追いつかれてしまう。他と差がついている子は本人が気付いてやる気になっているのであれば、補習をやるしかないが、いつやるか?

Q:やっている人、やらなかった人の差 についてどう考えますか。

▶田中:いつもより時間を長く授業し、部活動で疲れておらず、宿題をやる時間もたっぷりあったので、例年よりも進みが良かったし、定着度もよい。6月15日(月)から塾に来てもらって、学んだことが本当にできているかどうかを確認し、完璧にできるまで繰り返させている。中3は思った以上にできていた。中1、中2は案の定、理解はしているが確実ではない子が多かった。通塾になって、完璧になるまで帰れなかったり、別日に来なければならないので、目の色を変えてやる子が増えた。次元が一つ上がった感じがする。

▶渡辺:やるかやらないかが、自己責任になってしまった。そこが弱い子はできなかったから、塾が場を準備してやらなければならない。

Q:今後、zoomを使っていくか?

▶柳田:高校生は使える。特に、現代文の授業テンポはzoomでの相性が良いと感じた。zoomでいいかと聞くと手が挙がるのは高3の現代文。中学の英語では長文のペアワークなどはかえってzoomが使えるかも。逆に対面では難しい。

▶鈴木:マンツーマンの個別は(web家庭教師)はハマる子はハマる。今のままでは緊急時に使うものでしかない。しかし個別ではビジネスとして成り立つのではないか。

▶田中:zoomで授業をする分、教室が空くので自習室として活用している。実際できているかは塾で確認するが、授業はzoomでも可能だし、youtubeに動画をあげているので、それを見てもらって授業を受ける反転授業ができる。見ないでごまかしている子もいるのでオンラインの授業中に動画を見せている。質問を4個以上見つけるなど、個数を決めて宿題を出した。4つ見つけるまで残して見つけさせた。普段は質問をしない子も質問しったし、それに対する解説授業はよかったと生徒が言っていた。講義を進める授業と質問をオンラインで、演習は教室で。

▶渡辺:zoomを活用すると場所が空く。教室が一畳でも大丈夫だし、生徒の対象が全国。究極的には世界まで。

Q:科目でzoom対応しやすかったのは?

▶柳田:配信で画期的に進化したのは社会。Preziというプレゼンソフトを使って、視覚的に教えたら好評。アクティブラーニングでは生徒が生のペアワークは出来ないが、ブレイクアウトルームを使うと出来る。生だとコミュニケーションが難しいのに、オンラインだと出来るというのは現代の生徒ならでは、か。

▶鈴木:理科での資料を見せるなどの説明はいいが、数学での問題演習で出来ているかわからない。大丈夫かと聞くと大丈夫だというが・・・。

▶渡辺:リモートもより時間かけて工夫をすればより本質が見えてきて、時間や場所などの効率ではいいが、わかっているかどうか、伝わっているかどうかのようなエモーショナル部分では対面には敵わない。そこが本質の違いではあるので、これからは使い方の工夫なのではないだろうか?

1時間という短い中で、得られた皆様の現状とご意見は今後の塾を考えるキッカケとなると思う。最後に、去年の私塾ネットの研修でスタディプラスの宮坂直さんやラボ寺子屋の小泉正太先生に出会えて、今の状況になったのは奇跡的なものだと感じている。改めて、その出会いに感謝をして、締めくくりとしたい。