連載「受験と食生活vol.3」受験本番直前こそ「栄養戦略」が合否を分ける

アシェット 尾田衣子さん

受験本番直前こそ「栄養戦略」が合否を分ける 〜知っておきたい“脳と体のコンディション設計”〜

これからの時期は、受験生にとって最も負荷が大きく、同時に最も伸びるシーズンです。勉強量がピークに達し、模試の結果が気になり始め、緊張や焦りも増える。この時期の体調管理は“体調を崩さないための防御”だけでなく、“脳のパフォーマンスを本番で最大化する攻めの栄養戦略”が重要になります。

学校や塾の先生方も保護者の方も、どうしても「勉強量」「メンタルサポート」に意識が向きがちですが、実は 脳の処理速度・集中力・思考の安定性 は、食事によって“かなり”左右されます。

ここでは、受験本番直前の時期におさえておきたい、科学的根拠のある「合格へつなげる栄養サポート」を整理します。

1.受験本番は“脳の持久戦”。鍵はブドウ糖の「質と安定供給」

脳のエネルギー源は基本的にブドウ糖ですが、ここで重要なのは 「血糖値が安定しているか」 です。

血糖値が乱高下すると、「集中力が急に落ちる」「イライラ・不安が強くなる」「思考がまとまらない」「ケアレスミスが増える」といったトラブルが起こりやすくなります。

特にこの時期は追い込みで夜食が増え、「菓子パン」「カップ麺」「甘い飲料」などを摂りやすく、血糖値スパイクを起こしやすいタイミングです。

◎ポイントは“ゆっくり吸収される糖質+たんぱく質”の組み合わせ。例:玄米・雑穀・全粒粉のパン、そば、さつまいもに、卵・納豆・ヨーグルト・チーズ・鶏肉などを加えると血糖値が緩やかに上がり、長時間の集中が持続しやすくなります。これは試験本番の朝にも直結します。「腹持ちが良い食事=脳の安定感」を意味するのです。

2. 冬の受験生は“鉄欠乏”に注意

集中力の低下、焦り、不安感の増加の背景にあることが多いのが 鉄不足 です。鉄は「脳へ酸素を運ぶ」「学習の要である神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)をつくる」という極めて重要な役割をもちます。冬は気温が下がるため末梢血流が低下しやすく、鉄の働きが鈍くなることもあり、「疲れやすい」「やる気が出ない」「眠い」といった症状は、単なる“やる気の問題”ではなく“栄養不足のサイン”の可能性があります。

◎意識してほしい鉄リッチ食材:赤身肉(牛・豚)・レバー・カツオ・マグロ・あさり・小松菜・ほうれん草・卵。ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がるため、レモン・みかん・ブロッコリーなどの冬の野菜果物と組み合わせるのがおすすめです。

3. 脳の“メンタル安定”を支えるのは腸

受験本番が近づくと、体調だけでなくメンタルの乱れも生じやすくなります。ここで重要なのが 「腸は第二の脳」 という視点。セロトニン(心を落ち着かせるホルモン)の約90%は腸でつくられる ことが知られています。腸が弱ると「不安が増える」「イライラしやすい」「眠りが浅い」「集中力が続かない」といった状態に陥りやすく、受験直前には避けたいところです。

◎腸を整える食材:発酵食品(納豆、味噌、ヨーグルト、キムチ)・食物繊維(海藻、きのこ、野菜、果物、オートミール)・良質な油(オリーブオイル、えごま油)。特に冬は水分不足で便秘が増える時期なので、スープや味噌汁を日常的に活用し、“温かい水分”を意識して摂ることをおすすめします。

4. 最後の伸びをつくる「集中の土台」=タンパク質

タンパク質は「思考スピード」「情報処理」「記憶力」「メンタルの安定に必要な神経伝達物質の材料になります。しかし、受験生は「炭水化物メイン」の食事に偏りやすく、タンパク質が不足すると、疲れが抜けにくくなり、夜の集中が続きません。

◎毎食入れてほしいタンパク源:「卵」「鶏むね肉」「魚(特に青魚)」「豆腐・納豆」「チーズ・ヨーグルト」。特に 青魚のEPA・DHAは脳の栄養そのもの。冬場はサバ・ブリ・サンマなどおいしい季節なので積極的に取り入れたいところです。

5. 受験本番の朝食で“得点力”を上げる鉄則

本番の朝食は「脳の安定と持久力」をつくるメニューにすべきです。

◎おすすめの組み合わせ:「主食:おにぎり(鮭・梅・昆布など)or 玄米ごはん」「たんぱく質:卵・鮭・納豆・チーズ」「野菜:みそ汁(わかめ+豆腐+ねぎ)」「果物:みかん or りんご」。ポイントは“腹持ちがよく、血糖値が緩やかに上がること”で、甘い菓子パンやジュース、脂っこい揚げ物は避けた方が無難です。試験当日は「緊張で食べられない」子もいますが、その場合は「バナナ」「ヨーグルト」「チーズ」「小さめのおにぎり」といった“軽く食べられるもの”を準備しておくと安心です。

6. これからの時期、学校や塾と家庭ができるベストサポート

冬の受験生に必要なのは、豪華な食事ではなく 「脳の動きを安定させる習慣」 です。先生方からは、「夜食はヨーグルト+ナッツ」「試験前日は揚げ物より、消化の良い温かい食事を」など、短いメッセージを伝えるだけでもご家庭の行動が変わります。保護者の方は、“毎日完璧に作ろう” と頑張りすぎず、「型」=簡単に続くパターンを作ることが合格力につながります。受験本番に必要なのは特別なサプリでも高級食材でもありません。脳と体のパフォーマンスが最大になるよう、血糖値の安定、鉄、腸内環境、タンパク質この4つを整えることです。冬の食事は、子どもたちを支える“静かな応援”。食卓が整うと、子どもは驚くほど安定して力を発揮します。

学校・塾と家庭がタッグを組み、受験生が安心して本番に挑める環境を整える。栄養は、最後の最後まで伸びる“合格の土台”です。

●尾田衣子 プロフィール
料理研究家としてTV出演、料理本著書多数あり、分子栄養学アドバイザーの資格を持つ。分子栄養学の知識を応用し『栄養が成績に直結していること』を自らの子育て中に発見。現在は受験生の親子の食事を改善することで『やる気・集中力』が向上し成績UPへと導く「受験必勝フードサポーター」として活躍している。