私塾ねっと誌上句会「春夏秋冬」再開第九回

<谷村選&評>

茶店奥に主人独りの冷そうめん
宅配の届いて知るや父の日と

木内恭裕(徳島県)

母の日と比べ父の日はとかく忘れられがち。それは洋の東西問わぬようで、父親が母親より軽んじられるのは生物的必然でしょうか。分らぬでもありませんが。「父の日は今日じゃないかと子に問えど(志厚)」

軽鳧の子は一列にただ親を追う
初夏の街くじらのような雲ひとつ

長江勝秋(神奈川県)

初夏の街の空にクジラのような大きな雲。情景が目に浮かびますね。街の空であることがいいですね、ビルの上空にクジラが泳いでる景はまことに雄大でいいですね。

雨つゆの黄を輝かせ花かんな
回覧板ポストにコトリ梅雨明けぬ

中村直人(神奈川県)

表紙を飾るカンナは日本の園芸用語では「花かんな」と呼ぶようです。梅雨の時節、ふと雲間から漏れた日差しがカンナを照らします。雨に濡れた花弁の艶やかな黄が鮮やか。

麦秋やカナヘビ捕らえし児に笑顔
梅雨空や民の憂いは彼の地にも

監物一男(埼玉県)

彼の地、おそらくウクライナには梅雨は無い。我々梅雨の民の鬱陶しい気持ちは、彼の地の方々の現実の憂鬱とは異質なものですが、なんとなく共感できます。梅雨明けの解放感を、彼の地の皆さんにも一日でも早く味わっていただきたいものですね。

衣更え二の腕白き通学路
泥の香をまといて一家の田植かな 

谷村志厚(千葉県)

愛媛の年老いた兄から、今年で田植えも止めて離農するとの報告があった。60余年以前、6月の農繁期には学校は臨時休校となり、一家を挙げて田植えで数日を費やしたものだ。泥の香の句は望郷の一句。

編集部よりお願い

次号は11月発行の秋号です。 投句はお一人3句まで春の季語でお願いします。投稿は、谷村までメールでお送りください。締切は10月末日です、ふるってご投稿ください。