私塾ねっと誌上句会「春夏秋冬」再開第六回

<谷村選&評>

はぜ釣や大人子供の入り乱れ
自家製の柚子味噌送る妻ニヤリ

木内恭裕(徳島県)

はぜ釣りといえば、首都圏では東京湾の船釣りを想像する。大人子供が入り乱れる釣り風景はもちろん防波堤などでの陸釣り風景。豊かな海の幸を楽しむのどかな風景がなつかしい。

浜ジャズの汽車道歩けば天高し
夕月や思うことあり一人酒

長江勝秋(神奈川県)

10月8・9日、横浜ジャズプロムナードという音楽イベントが3年ぶりに復活した。長江さんはジャズ演奏を趣味とされていたので、このイベントの復活をさぞや喜ばれたことであろう。

味噌汁にすだち絞れと阿波の人
丘一面そよぐコスモス風やさし

中村直人(神奈川県)

徳島の方は秋の贈り物にすだち(酢橘)を重宝される。我々の理解ではすだちは焼き魚や酢の物に添える程度の知恵だが、阿波徳島の皆さんはどんな料理にも絞れとなるらしい。故郷の味覚は万能である。

星流る逝きてミハイル再評価
秋の暮れ青函の霧笛耳残る 

監物一男(埼玉県)

ミハイルとはソ連最後の指導者ゴルバチョフのこと。ウクライナ戦争のさなか、彼は世を去りプーチンの不敬な対応が話題になった。下五の「再評価」にウクライナ戦争への世間の批判の声が集約されていよう。

啄木鳥の新居となれる大樹かな
落葉踏む音の岩に染む立石寺

谷村志厚(千葉県)

「閑さや岩にしみいる蝉の声」は言わずと知れた芭蕉の奥の細道の一句で、山形県立石寺の夏の景。「落葉踏む」の句は「閑さや」へのオマージュ、立石寺の初冬の景で遊んでみた。

編集部よりお願い

次号は2月発行の晩秋号です。 投句はお一人3句まで冬の季語でお願いします。投稿は、谷村までメールでお送りください。締切は1月末日です、ふるってご投稿ください。