第19回 全国塾長・職員研修大会報告 [2022.4.17]

(文:中村直人)

薄曇り時折小雨の2022年4月17日(日)午後2時より、大井町のいぶき学院の一室でZOOMによる、全国私塾ネットワーク・第19回全国塾長・職員研修大会が開催されました。長引くコロナ禍のため、今年はZOOMメインで、無料の双方向オンライン研修大会といたしました。今回は「我逢人(がほうじん)」(人と出会うことの尊さ、出会いは人を成長させる種という意味の禅語)をテーマに、私たち私塾ネットのお仲間から、埼玉で非常にユニークな教育を実践されている朝日学習館の梶原賢治先生と四国香川でコロナ下でも元気な小野塾の小野昭先生にご講演をお願いたしました。当日は、参加人数42名。内訳:会場11名、WEB参加31名でした。

13:30よりZOOM入室許可開始。開始の14:00に、今までの全国研修大会をまとめたオープニングビデオ「我逢人」が流されました。終わったところで私塾ネット理事長の仲野十和田先生が画面に登場し、主催者を代表してのご挨拶をいたしました。本日が理事長最後の仕事となります。理事長任期4年さらに延長2年を務めさせていただきました。私塾ネットは、在京3団体がまとまり、初代理事長山口恭弘先生、二代目谷村志厚先生、三代目鈴木正之先生、四代目湯口兼司先生、どの方も本当に尊敬している方たちであり、その背中を見てずっと私塾ネットの一員としてやってこられたことは、うれしくまた幸せなことと感じております。今回のテーマ「我逢人」ですが、私塾ネットは、まさに会だけでなく他の団体の人や、学校関係の方、企業の方々とかの出会いを得て、自分自身も成長できた会だと思っております。本日の講演者お二人の簡単な紹介と4月14日のセンター会議で新理事長に田中宏道先生が選出されたことを報告して、挨拶を終えられた。

次に、司会のセンター事務局長江広紀先生が登場。資料の確認。本日の御来賓を代表して駒込中学高等学校校長の河合孝允先生に御挨拶をお願いいたしました。

みなさんこんにちは。本来ですと東京女子学園の實吉先生が私学を代表してのご挨拶をなさるところですが、早いものでお亡くなりになってもう2年たちます。今日はご挨拶に代えて、實吉先生とのエピソードをご紹介しておきたいと思います。皆様方とのご関係も新たに再発見していただけるのではないかと思います。實吉先生とは平成7年(1995年)に東京女子学園で有志の勉強の会を立ち上げました。5校ほどオーナーも校長か理事長の方においでいただき始めました。どういう勉強会かというと、「私学と私塾は同じだよね」というところから始まったんですね。要するに私学というのは一つ一つの学校がオリジナリティを持たなきゃ私学じゃないだろう、自分たちの創立理事長たちがどのような思いで自分の学校を立ち上げたのか、それをまず話し合ってみようということでスタートしたのです。そのうちに人が集まり、声をかけた第一回目市ヶ谷の私学会館では100校以上も集まってしまい、實吉先生が私に「これじゃ、第二協会が出来ちゃうからまずいよ」「解散させてくれよ」と言い、結成大会で解散を宣言するということになってしまいました。また元のメンバーに戻って勉強会を進め、私学も私塾に頼りっぱなしではなく支部ごと私学相談会を立ち上げていきました。今では、5万、10万と集まるように発展してきました。さらに、地域ごとに相談会を開く中で私塾の先生方といろいろなお付き合いがスタートしたという次第です。今の東京私学がつぶれずにあるのは、30年近い私塾の方たちのご支援があって初めて成立していると思っております。心より感謝申し上げます。今時代は、well-beingな学校創造ということで、文科省もこの4月からどの学校も特色を出すように求めてきています。これまで知識だけを与えていればよかった学校が変革を求められています。先進校と変われない学校の二極化している中、駒込が多大な成果を出しているのも塾の先生方のご支援・協力があってこそというのを、駒込が証明していると言えます。今日皆様方とこの会にて、お話が聞けるということを大変楽しみにしております。

次に、新理事長田中宏道先生のご挨拶がありました。先生は、全国の模擬授業大会で優勝されるなど教務力指導の長けた方です。また、長年全国塾長・職員研修大会の企画・実行の中心として活躍されてきました。私塾ネットが全国規模の任意団体として、学びを通じて皆さんや他の団体・他分野の人とも繋がれるハブとして盛んにしていこうという抱負を述べられました。先生主催の新しく全国誰でも参加できる学習会の紹介の後、今回選出されました、エリア東北新代表の佐々木康先生、エリア四国新代表の小野昭先生を紹介されました。

ここより、田中先生が研修の司会を務めました。最初の講演者である、朝日学習館の梶原賢治先生の紹介です。梶原先生の塾では、四谷大塚小学生テストで全国1位を10年連続で出しております。しかも、まったく勉強を教え込んだりはしていないのです。塾のモットーは「天に星。地に花。人に愛!その考える力を人のために!」です。

埼玉県川口市で塾を初めて46年超。私塾ネットの前身、日本私塾会・全塾連・PTFや塾教育研究会というところで20〜30年勉強させていただいて、30年ほど経った頃、ここで勉強したことを発酵させることで何か面白いことができるのではないかと感じました。そこで出てきたものがパズル教室ですね。1枚の紙の上でのものでなく、むしろペーパーレスで実体というものを大事にしていったら、子供の思考力・発想力、平面図形・空間図形などに豊かな成長ができるのではないかということで、10年ほど前にパズル教室をスタートさせました。その前は小学生・中学生中心に見ていたのですが、30年過ぎたあたりから、もっと小さいお子さんたちが生まれてどういうふうに育って今日にいたっているのか、というのを見てみたいと思うようになりました。そしてだんだん学年が下がっていき、幼児教育をする中で、お受験を担当することになりました。たまたまそのお子さんが全国1位を獲得したことで、その頃から一挙に小さいお子さんが増えるようになりました。そして、私が子供さんたちを担当させていただいて思うところは、「子供というのは多様性のかたまりである。」「何かができる、できないも多様性である。勉強ができる、できないも多様性である。」いわば一つの個性ではないかと思うようになりました。現在ダイバーシティと、多様性を大事にしようと叫ばれている社会の中で、5人10人100人の学習塾というのが、最も子どもの多様性に依存しながら便乗して彼らの良いところを引き出して行けるのではないかと考えています(その後、一つのツールがアナログパズルということで、実際の手作りの立体図形の模型や生徒の作ったパズル・ゲームや実社会の事柄と線対称・点対称等をリンクしたプリントや上級生・下級生二つの無学年のパズル教室の授業風景のビデオを流しました)。

昔から塾では、生き物・昆虫を飼っているのですが、生き物には人がくっついてくると強く感じるようになったのがこの数年です。ヒマワリの種を植えたものが芽を出すと、それを実際に観察することが子供の興味をかき立てます。生徒が持ってきたカタツムリの幼虫を育てたり、子供たちが餌を工夫してヤゴを育てたり、自発的に喜んでやっています。現在は、アナログパズルの柱と、もう一つの柱:植物・昆虫飼育が塾の中心になっています。それらは、子供たちを楽しませ、お父さんお母さんの関心を引き付ける魅力的なものではないかと思います。学校と塾の2本立てで、ご父兄には原則学校さんでやることは塾ではやりませんと言ってあります。ただし、学校でやっている学年相当の事で問題がある場合は対応させていただきます。

教室では簡単な実験をやるのですが、生というのが一番想像力・好奇心をかき立てるようです。すると、教科書に書いてあることと違うことが出てきます。水は、0℃で凍るとありますが、実際は凍りません。実験したら-15℃で凍りました。また、安いアナログ顕微鏡も子供たちに感動を呼ぶ一つのツールになっています。アスペルガーで不登校のお子さんも昆虫の話をしてみたら突然饒舌に話し出すように、昆虫は人を自然に結びつける力があるようです。将来は「昆虫じいさん」として塾を続けていければと考えております。

二番目の講演者は、四国小野塾の小野昭先生です。開塾26年目で香川に小・中・高の学習塾を5教室運営。家庭教師派遣・そろばん教室・硬筆毛筆教室と多角的に運営なさっています。「子供たちに寄り添い、元気に育ってほしい」というモチベーションで頑張っておられます。

本日のテーマは、自塾での活動報告です。何を話すか湯口先生に相談しましたら、春は生徒募集でしょうというアドバイスをいただきました。1つ目のテーマとしては、生徒募集。特に小学生を集める大切さ。2つ目のテーマは、SDGs次の10年を考える。この二つを本日のテーマとします。

まず1つ目ですが、(中1を100としたときに小1から中3までの在校生の比率を黒板に示し、自塾では小学生の割合が比較的多いことを示される。)小学生をかかえると、中学1年生になる時の生徒募集が幾分でも安心ですので、小学生を集めることは大切です。では、自塾に小学生が集まっている理由は何かというと、結論は小学生の授業のメニューの豊富さにあると思います。(この部分は、小野先生のエリア通信に詳しく書かれているので省略いたします。)その点が、募集がスムーズにいっている原因と思います。保護者様から見れば、それぞれ教科により違う塾を選ぶのでは送迎に難があります。その点の便利さをアピールポイントとしています。

あと小学生募集に大切な要素は、2つあります。1つは、講師の大切さです。講師においては2点。1つ目は、子育て経験のあるご年配の女性をパートで積極的に採用すること。2つ目は、夜の中学生を見ている正社員の講師が、いかに夕方の小学生の授業に入り込んでいけるか。小6から新中1になる時に継続していただけるような授業をしていただくためにも、モチベーションとして歩合給の部分を高く取っています。ただ、気をつけることは、講師はいろいろな煩雑な作業、例えば毎月のそろばんの検定などきっちりやることが大切です。そこに問題が起き、一度退塾されると二度と通ってはいただけません。残りの生徒募集2つ目は、チラシをうっているのですが、広く配布する新聞ではなく県の広報を使って塾の近くにDMをかけています。一度、県の広報を扱っている業者と交渉してみたらいかがでしょうか。

塾のSDGsについて。生徒数が激減する10年後に生き残るためには、2つのスリム化が大事。1つ目は社会保険料をどう考えるかです。事前確定届出給与という仕組みを使う。月々のお給料を少なくして、残りを一括で賞与という形で支給すると、厚生年金または健康保険料の削減になるのです。デメリットは年金額が減ることですが、分かって利用する分にはメリットがあります。2つ目の、社会保険料について。退職金の積み立て制度の確定拠出年金(401K)を使うことです。給与からの積み立て部分は福利厚生費として税金がかからない。これも実際の手取りが少なくなるデメリットもありますが、理解して導入するのはメリットがあると考えます。

2つの各講演のあとには、ZOOM参加の方たちは、ブレイクアウトルームに別れ、話し合う。会場は、クループに別れ話し合う。終了後、学校関係の参加者4名のエリアから参加の2名に挨拶を一言いただく。16:12に副会長の鈴木正之先生の感謝の言葉があり、ZOOM上で記念撮影をして、第一部終了しました。

16:15より第二部懇親会を開始しました。司会は、長江先生。埼玉県私塾協同組合の坂田義勝理事長と千葉県学習塾協同組合の鈴木雅規副理事長と全国学習塾協同組合の玉城邦夫副理事長にご挨拶と感想をいただく。

中国のK先生や千葉のY先生がお残りになった香川の小野先生にさかんに色々と質問をしていました。まさに全国の先生どうしが自由に情報を交換・共有している様子こそ、私塾ネットの象徴的な姿ではないでしょうか。K先生の1歳の赤ちゃんも登場。会場では、アルコールも入り楽しく歓談しました。

17:00の懇親会終了後も、会場のメンバーと大井町に駆けつけてくださった、田中新理事長と仲野先生・梶原先生ほかの皆さんと共に、近くの貸切りの店にて楽しく過ごしました。以上。