特集|2021年教科書改定 ポイントはここだ!

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提供:教育開発出版株式会社 東京2課 鈴木 庸純

新学年度教材の採用の時期となった。今年は中学教科書改訂のタイミングとあって、テキスト選びに慎重になられているのではないだろうか。私塾ネットの賛助会員でもある教育開発出版さんに、改訂のポイントをまとめていただいた。採択の参考としてください。(編集部)

英語

①語彙
学習指導要領では、小学で六〇〇~七〇〇語、中学で一六〇〇~一八〇〇語程度を扱い、従来の2倍になる。ただ、すべてを発信語彙とする必要はない。

②文法
小学校では、基本的な文構造のほか、文法的に見ると助動詞や不定詞、動名詞といった内容まで出てきた。ただ、多くの中学教科書ではこれを習得済みとして扱わず、文法的な観点から改めて学習する。なお、高校から下りてきた文法項目としては、仮定法・現在完了進行形・原形不定詞などがある。

③リーディング
長い文章を素早く処理することが求められる。具体的な手法として、文の概要をつかむ「スキミング」、広告やメールなどの短い文から情報を照会する「スキャニング」というスキルが提示されている。

④リスニング
音声のみで本文を把握することが当然のように行われる。

⑤スピーキング
道案内や買い物などのテーマで、特設コーナーで扱われるほか、随所に「本文で出てきた表現を、自分なりに言い換える」というタスクが与えられる。「ペアワーク」「発表」のウェイトも大きくなった。

⑥ライティング
スピーキングと同じく実用の側面が強くなった。どの教科書も手紙やメールから始まり、レポート作成にまで耐えうる表現力を、3年間で段階的に養成する。

数学

①主な単元移動
1、「素因数分解」が3年→1年。
2、「累積度数」が高校から1年。
3、「統計的確率」が2年→1年。
4、「反例」が高校から2年。
5、「四分位数・四分位範囲」「箱ひげ図」が高校→2年。
6、「誤差や近似値」「有効数字」が1年→3年。

②現実世界での活用
数学を現実世界でどう活用するのかが、より分かりやすく示された。端的にいえば「数学って何の役に立つの?」という疑問に、より丁寧に答える内容になった。

具体例として、導入部が実際の現象を題材としていることが挙げられる。これは従来も行われていたが、単元によっては割くページが増えた。また、“コラム”の増加傾向も挙げられる。“コラム”とは、「雷の発生地までの距離を音速との関数で求める」、「短い時間で測れる体温計は関数を利用している」など、現実世界での活用を紹介するコーナーである。

国語

①キーワードは「根拠」
中1・2では根拠を明確にすることが、中3では根拠をふまえて「多様な考えを想定し、合意形成する」「多様な読み手を説得させる」「批判的に見て、考える」ことが求められる。教室現場でどこまで厳密な指導ができるかという課題はあるが、グループワークや発表でも相手を納得させる技量が求められる。

②「意見」と「事実」を区別する指導が大切に
教科書会社によって表現はさまざまだが、「意見と事実の区別」「原因と結果の整理」「比較」「分類」「類推」などのスキルが改めて重視されている。特に「意見と事実の区別」は重要になる。

理科

①主な単元移動
○物理
・「光の色」が新規(1年)
・「2力のつり合い」が3年→1年に
・「水圧・浮力」が1年→3年に
・「圧力・大気圧」は1年→2年、地学扱いに
・「放射線の性質と利用」の一部が3年→2年
○化学
・「プラスチックの性質」が1年→3年
・ダニエル電池と金属のイオンへのなりやすさが高校→3年
○生物
・「生物の特徴と分類」が新規(1年)
・「動物の体の共通点・相違点」が2年→1年
・「葉・茎・根のつくりと働き」が1年→2年
・「生物の多様性と進化」が2年→3年
○地学
・「自然の恵みと災害」が3年生から各学年へ
→1年生に「自然の恵みと火山災害・地震災害」
→2年生に「自然の恵みと気象災害」

②理科は改訂の方向性が数学と似ており、各単元の導入部が充実した。
・目的(あるいは課題、疑問)の設定
・方法(実験や観察)の確認
・結果の確認
・結果の考察

以上の4つが、わかりやすく構造化された。また、仮説や推測をイラスト付きで掲載するなど、丁寧になった。また、「なぜ」「どのように」を自分で考えるとともに、他者の意見にも耳を傾けることを促している。「主体的・対話的な学び」が反映されている。

社会

①新学習指導要領のポイント
○地理
「日本の地域構成(時差を含む)」が冒頭に戻った。前回の学習指導要領では、前半の世界地理では日本の地域構成は扱わず、後半の日本地理で扱っていた。
○歴史
世界史、日本の領土画定や、現行の政治体制が確立するまでの歴史を詳しく扱うこととした。
○公民
「日本の領域」「政治参加」の内容の充実化がなされた。また、人工知能や起業など、今日的なテーマを扱うよう定められた。

②教科書は記述力や資料読解力を求める誌面に
各トピックが見開きで完結し、その冒頭に学習の課題・テーマなどが示され、それに呼応する形で“確認問題”が見開き末尾に配置されている。内容は、基礎事項の確認にとどまらず、むしろ思考力・表現力・判断力を伴う言語活動を行うものとなっている。地図や統計資料の読解も積極的に促されている。