私塾ねっと誌上句会「春夏秋冬」再開第十回

<谷村選&評>

軽トラに神輿(みこし)鎮座し秋祭 
枝豆やさやのくびれに想う美女
木内恭裕(徳島県)

軽トラの句、我が里の秋祭もずいぶん以前から神輿は軽トラに鎮座されていた。都内の名立たる祭りには、担ぎ手があふれているが、日本津々浦々の里祭りでは担ぎ手(若手)不足。過疎化は深刻なことになっている。

秋冷えの窓から木漏れ陽伝い来る 
冷めやかや妻置く湯呑みのお茶熱し
長江勝秋(神奈川県)

秋冷えの句、今年はまことに過酷な夏でした。9月の残暑もきびしく、日本は季節を忘れたのかと思ったものだ。窓から伝い来る木漏れ陽がうれしい日々の到来、季節の循環に感謝したい。

月光の虹イグアスの滝の中
自然の妙ポンポン咲きの百日草
中村直人(神奈川県)

イグアスと表紙写真の真ん丸い百日草との対比、大小と遠近そして動と静。これぞ俳句の妙が凝縮した二句だ。イグアスの滝は南米ブラジルとアルゼンチンにまたがる世界遺産。世界三大瀑布の一つだが、スケールの大きさは群を抜いているそうだ。それに架かる月光の虹、ここにも動と静の妙が際立っている。

秋空に今日も鼓笛の音聴こゆ
店先に銀の秋刀魚のまぶしかり
監物一男(埼玉県)

秋空の句、我々の世代では運動会は10月が旬と心得ていたが、昨今は1学期に移動している例が多い。校庭から流れてくる鼓笛の練習の音は、秋祭りの笛太鼓と同じく秋の風物詩である。一男さんは老後を小学校の補助教員でお過ごしとのこと。子供たちと日々を過ごすのは老後防止には最適であろう。

日々草老後の日々を彩れり
寒暖を行きつ戻りつ秋深む
谷村志厚(千葉県)

日々草の句、「表紙の花ことば」の欄に添えた一句。三寒四温は初春の季節に添える熟語だが、今年の秋は三暖四寒だ。いっこうに秋にならないとやきもきしていたが、11月に入って季節も落ち着いてきた。今年の秋は短そうだ。

編集部よりお願い

次号は2月発行の新春号です。 投句はお一人3句まで冬の季語でお願いします。投稿は、谷村までメールでお送りください。締切りは1月末日です、ふるってご投稿ください。