私塾ねっと誌上句会「春夏秋冬」再開第一回

<谷村選&評>

あじさいがかまわず茂る裏戸口
この夏はモデルナで行く覚悟かな
中村直人(神奈川県)

梅雨の時期のあじさいは手を入れないと傍若無人に繁茂する。わが家にも玄関先に一株植わっているのだが、これが通路を塞いでやっかいなことになっている。「紫陽花に小径とられて廻り道」加賀千代女の朝顔の句をパロって一ひねり。

友からの包みサクランボウのあふれおり
二つ三つ口からこぼれ枇杷の種
十亀幸雄(愛媛県)

サクランボウ、枇杷ともに夏の果実の代表格だが、昨今はともに高級品となりもっぱら贈答品として人気が高い。さくらんぼうは山形の佐藤錦、枇杷は千葉の房州ビワが有名。知人に房州富浦の枇杷農家がいるが、一昨年の台風では甚大な被害を受けた。

兄弟のコウノトリ舞う紅蓮田
次々と鳴き連なるや雨蛙
木内恭裕(徳島県)

紅蓮田は蓮の花の咲く田んぼのことで夏の季語。鳴門市に数年前からコウノトリが住み着いて、毎年ヒナが育ちこの時期に巣立ちし、近くの蓮田や水田で餌をとっています。まだ私は直接見てはいませんが、テレビでよく見かけます。(木内)

香水のかほり残して君は去る
この雨は梅雨につらなる先駆けか
長江勝秋(神奈川県)

昨年大ヒットしたのが瑛太の歌う「香水」。ドルチェ&ガッバーナというブランドの歌詞が話題になった。我々の世代で香水といえばマリリン・モンローの「シャネルの5番」にとどめを刺す。長江さんのお相手もこれをつけておいででしたか?

梅雨寒や呑み屋(みせ)の親父の仏頂面
止り木にコロナの愚痴や冷酒酌む
谷村志厚(千葉県)

居酒屋俳句2句。マン防の禁酒措置が緩んで、ほぼ2か月ぶりに馴染みの店の客となった。久しぶりに顔を合わせた常連は、ワクチン接種の話題で持ち切り。休業を余儀なくされていた店の親父の愚痴を肴にしばしの痛飲、談笑。