<谷村選&評>
インパチェンス白に花芯の紅さやか
あおのけに落ちる夢見て冬に入り
中村直人(神奈川県)
表紙写真のインパチェンスは白い花弁に鮮やかな紅色の花芯だが、調べてみると花弁はピンク・黄・紫とカラフルだ。だが、よく見ると花芯は何故だかどれも紅。ピンクあるいは黄色の花弁に紅の花芯、その取り合せが面白い。晩夏から晩秋のガーデニングに人気なのが納得できる。
山径へ独りゆるゆる落葉踏み
湯豆腐や薬味要らずの我が肴
木内恭裕(徳島県)
湯豆腐に薬味は要らないという木内さんの味覚、大人だなと納得する。味覚は年齢とともに変わる。例えばミョウガ。子どものころにこれが好きという子に出会ったことはないが、大人の舌はこれを歓迎する。ところで木内さんの前号の掲載句に、小生の校正漏れがあったので誌面を借りてお詫びしたい。「鉦の音にしびれ切らして阿波踊」が正解で下五が「阿波」で切れていた。この「踊」の脱字を見つけ時には「あわ」てた。
友好のアフガン用水冬浅し
露店の灯秩父夜祭曳き踊り
監物一男(埼玉県)
友好の句、5年前にアフガンで銃撃され亡くなった中村哲医師の功績を詠んだ一句。中村哲氏が作家火野葦平の甥で、葦平の名著「花と龍」の主人公玉井金五郎の孫であることはあまり流布されていない。中村医師の常人離れした行動力は、この金五郎という名代の人物の血であろうか、まことに興味深い。
金色(こんじき)の衣脱ぎさり冬木立
木枯しの産まれる峰や上毛三山
谷村志厚(千葉県)
12月初旬、埼玉県行田市へ俳句仲間と「俳句イング」に行った。行田は関東平野の果て、その先には群馬の峰々、上毛三山(赤城・榛名・妙義山)、が望める。この三山こそが上州名物の「空っ風」の故郷であり、冬の関東平野を吹き抜ける「木枯し」の源である。山口誓子の名句に「海に出て木枯帰るところなし」がある。上毛の地で産まれた木枯しは関東平野を駆け抜けて、房総の地から太平洋に至るのである。
編集部よりお願い
次号は2月発行の新春号です。 投句はお一人3句まで冬・新年の季語でお願いします。
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