私塾ネット関東研修 SEアカデミー

水谷敬 /SEアカデミー(千葉県船橋市)代表

│ 私塾ネット関東訪問研修に参加して 伊藤 葵(いぶき学院)

今回、水谷先生が教室長を務めるSEアカデミー船橋法典教室に訪問させていただき、水谷先生の取り組みを聞くことができただけではなく、株式会社アシェットの尾田さんより分子栄養学についてのお話を聞くこともできたので、その両方で学んだことについて触れたい。

水谷先生の取り組みで印象的だったのは、常に先のことを見せて意識させているということと、選択肢を与える代わりにその責任も彼ら自身に取らせるということ、この2点である。これらは一見あまり関係ないことのように思えるが、その本質は共通しているように思う。つまりどういう選択であれ、その選択によって自分の未来を作っていくことになるのだという自覚を持たせることに繋がっている。

受験生にとって進学後にどんな日々が待っているかということは、やはり未知の体験なのだから想像が難しい。そこで男女比や外国人の学生の数など具体的なデータをして、どんな環境になるかを想像させる。そうして自分の望む環境とはどんなものかを考えさせる。また教室内を飲食可にする代わりにゴミが落ちていたら全体の連帯責任として禁止し、その制限を解除するための条件を提示する。すると飲食したいのかどうかをまず考えるし、したいのなら解除条件のために努力する。こうして自分がどんな未来を求めているのかを考えて、そのために努力するという下地が塾に通う中で出来上がる。自分の未来に自らコミットする人間になっていく。それはただ塾で勉強しているだけではできないことである。

次に尾田さんの分子栄養学のお話について。私が注目したのは、料理研究家でもある尾田さんが分子栄養学と出会う経緯であった。コロナ禍の中で料理教室の開催などは難しくなってしまい、この際だからと子供の中学受験に注力することに決める。しかし子供に勉強を教えようにも中々難しい。そこで勉強面のことは塾に任せ、料理(栄養)の面から子供をサポートする方針に転換したことをきっかけに分子栄養学に出会ったという。

ここで注目したいのが、子供のために何かしてあげたいという親心である。中には勉強のできる保護者ももちろんいるだろうが、たとえ中受であっても勉強を教えられるとは限らない。無理してでも教えようとすれば歪みがどこかに出るというものだ。下手をすれば、塾に通っていても勉強が上手くいかなくなる原因にもなりうる。それゆえ子供に向いているエネルギーをどのような形で使うか?ということはかなり重要だと言える。尾田さんはそれを料理という形に昇華したわけだが、どうすべきか分からないというひとも結構いるだろうと思う。そこで受験をただ受験生だけのものとして捉えるのではなく、家族単位で見直したならば、保護者には何をしてもらうか・何をしてもらわないかという点もセットで考えることができるのではないだろうか。

お二方のお話を通して、どのように塾生と接するかということについて非常に刺激を受けたし、また塾生だけでなく家庭レベルでの関わり方という点でも新たな視点を得ることができた。このような研修に参加する機会をいただけたことへの多大なる感謝の念をもって、報告とさせていただきたい。