マリーゴールド
(キク科・原産地メキシコ)
マリーゴールドは初夏から中秋にかけて長く咲き続け、花壇に彩りを絶やさぬ花だ。和名には千寿菊、万寿菊、孔雀菊、山椒菊といくつもの名称があるようだ。千寿、万寿は長く咲き続けることへの敬称であろう。孔雀は丸く艶やかな姿が孔雀の翼を広げた景になぞらえてものだろうか。では山椒とはこれまた何故?マリーゴールドは見かけに寄らずと言うか、なるほどと言うか、独特の「体臭」を発するのだそうだ。そのうえ根の周りにいる菌が害虫を遠ざけるそうで、花壇に植えると虫を寄せ付けない効果があると言う。
原産地メキシコでは「マリア様の黄金の花」とも呼ばれている。これは聖母マリアの祭日に咲いていたためのネイミングだそうだ。メキシコのもっとも重要な宗教行事「死者の日」には欠かせぬ花だそうで、この日(11月1、2日)、メキシコの全土はマリーゴールドの色と香りに覆われるという。ちなみに「死者の日」とは、死者を偲びそして感謝し、生きる喜びを分かち合うメキシコにおいて最も重要な宗教的風習。日本の「盆」に相当するものであろうか。
♬麦わら帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似ている あれは空が青い夏のこと 懐かしいと笑えたあの日の恋♬ この一節をご存じだろうか。若手女性シンガーソングライターのあいみょんのヒット曲「マリーゴールド」のサビの部分である。今回のテーマ写真に出会ったとき、真っ先にこの歌を思い出した。この花の太陽を思わせる色と形に夏のイメージが、そしてマリーゴールドという名に、いくらか奔放なる女性の姿が重なる。この歌のひと夏の恋の終わりの物語に納得がいくのである。(志厚)