<谷村選&評>
季節越えなお黄眩しき万寿菊
人智越えAIの地平毒きのこ
中村直人(神奈川県)
万寿菊とは今号の表紙を飾るマリーゴールドの和名。この件については右ページの「花こ・と・ば」をご一読下さい。さてAI、凄いことにと言うか困ったことになる予感。ウクライナでの戦いは、AI戦の様相をますます高めている。人間がコントロールすべきAIに人類が操られる近未来のSFが、いよいよ現実味をおびてきた。
鉦(かね)の音にしびれ切らして阿波
文化の日当地自慢の管弦楽団の音
木内恭裕(徳島県)
阿波踊の句、鉦の音にしびれを切らすという感性はなるほど納得である。本場の阿波踊に生で接したことはないが、関東でも中野や越谷など町おこしの祭で阿波踊を楽しむ機会は多い。「踊る阿呆に見る阿呆…」の掛け声にのって、日本の各地に阿波踊が広がり楽しまれている。日本のこんな平和な日々はありがたいことだ。
秋暁(しゅうぎょう)やパンダ友好何処へ往く
文化祭書道パフォーマー乱舞せり
監物一男(埼玉県)
上野公園のパンダ「リーリー」と「シンシン」が、9月29日に中国へお帰りになられた。なにしろ中日パンダ外交のお偉方であるので、敬語でお伝えしなくてはならない。お二方ともご高齢で高血圧を患っておられるそうで、他人事ではない。上五の「秋暁」の季語は、午前四時に成田を発たれ帰国の途につかれたからだそうだ。ご配慮、謝謝。
能登半島(はんとう)のまた咆哮(ほうこう)す秋出水
名月を異国の孫へ見送れり
谷村志厚(千葉県)
能登では、1月の大地震の傷の癒えぬうちに今回の豪雨災害である。半島とそしてそこに住む人々の苦しみの声が聞こえて来る。南米のペルーに6歳になる孫娘がいる。時差は14時間、今夜の名月をめでるのは、日本時間では明日の朝であろうか。ペルー・クスコの夜が晴天であることを願う。
編集部よりお願い
次号は12月上旬発行の秋号です。 投句はお一人3句まで冬の季語でお願いします。投稿は、谷村までメールでお送りください。締切りは11月末日です、ふるってご投稿ください。