起きた瞬間、お腹が痛い。腹を出して眠っていたようだ。トイレに行った後、再び布団に潜った。何度か目が覚めたが疲れで起き上がれない。今日は正月以来の休みだ。映画の予約も入れてある。腹痛が治まってくれるといいが…。
さやかから連絡が来ない。今日の午前中には合否が発表されるはずだ。ダメだったか…。彼女の受ける学校の先生とは旧知で、年賀状や日々の勉強の様子を画像付きでメールで送ったり、お電話も頂いたりしていた。いかんせん、彼女自身はあまり勉強していない…。
再び起きたときは上映時刻間際だった。観念した。腹痛と疲れで行ける状態ではない。映画館にいるときは携帯の電源を切るのが常だが、今日はそういう訳にもいかない。たとえ体調が良くても映画を楽しめなかっただろう。
電話が鳴った。さやか? 転送された携帯電話に恐る恐る出る。「娘が塾の前にいるが、開いていないと言っている」電話の主はのぞみの親だった。今日も自習に来たのだろう。土曜日と祝日はやるが、今日は休むと伝えたはずだが…。
「これから開けに行くので、そのまま待たせてもらえますか?」口から出かかったが、できなかった。きっと彼女は帰宅しても、自習室ほど集中して取り組めないだろう。着替えて、勉強道具を鞄に入れて、寒い中家を出てくれた。応えたい…。もう映画を観に行かないし、教室を開けたかったが…。
もしのぞみが月末に不合格となったら、今日自習室が開いていなかったことを責めながら泣きじゃくるかもしれない。入試の前なのに自習室を開けてくれなかったと。年明けから土日祝日全部教室を開け続けたが、今日はただ鍵を開けるだけも厳しかった。心の中で謝り、彼女の健闘を祈った。
と延々書いているが、あまり合格不合格にはこだわっていない。いずれにせよ、良い経験や糧となってくれたらと思っている。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」(野村克也)である。ただ、時には強烈に自己否定する材料にもなり得るから、その時は全力で肯定してあげたいなとは思う。
その時だった。さやかからLINEが来た。ダメだったと思い、実は落ち込んでいた。「おめでとう」とスタンプを送った。「ありがとうございました」と返信が来た。きっと今日のさやかの家はお祝いだろう。
思っていたより一喜一憂していた自分がいた。修行が足りないようだ。さあ、頑張るか。シャワーを浴びて着替えを始めた。遅い一日の始まりである。
第110回サロンヒロキへようこそ。
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