表紙の花こ・と・ば(85号)

カーネーション
(ナデシコ科・原産地南ヨーロッパ)

和名を「和蘭撫子(オランダナデシコ)」、「和蘭石竹(オランダセキチク)」と言う。和蘭が冠せられるのは、この花が江戸時代にオランダ人によって持ち込まれたからだろう。撫子はナデシコ科なので納得として、石竹とは?これは花の形が撫子に似た中国原産のナデシコ科の多年草だそうだ。

カーネーションといえば、5月第2日曜日の「母の日」と相場が決まっている。母の日にこの花を贈る習慣は100年以前のアメリカに始まる。フィラデルフィアに住む少女「アンナ・ジャービス」が、亡くなった母の追悼集会で白いカーネーションを贈り、「生きている間に母への感謝の気持ちを伝える機会を設けるべきだ」と働きかけたことがきっかけとされている。その結果1914年に5月の第2日曜日を母に感謝する記念日とする「母の日」と制定された。日本で一般に広まったのは戦後の1950年代のようで、占領下に進駐米軍が持ち込んだアメリカ文化の一つであろう。

キリスト教では、イエスが処刑される時、聖母マリアが落とした涙が地面に落ちてカーネーションの花になったと言い伝えられている。そこでキリスト教ではカーネーションを「母の愛」や「無垢の愛」のシンボルとしているそうだ。「母の日」とカーネーションとの結びつきの由来はここにあるのだろうか。

ちなみにレオナルド・ダ・ヴィンチの描いた「聖母子像」の中には、聖母マリアがカーネーションをキリストに手渡す作品があり、「カーネーションを持つ聖母」と呼ばれている。(志厚)