表紙の花こ・と・ば(80号)

パンジー(スミレ科スミレ属) 

我が家の狭庭に越冬の花として、葉ボタン、シクラメン、パンジーの3種が植わっている。これらはいずれも寒さに強い種なので、冬の花壇を彩るには適当であろう。だがシクラメンは手入れの悪さもあって精彩を欠き、ビロードの花弁も「シオレタメン」の様相である。葉ボタンは元気だが幾らか色合いが地味、その点パンジーは黄色い大きな花弁を寒風にくゆらせながらも、健気な姿を保っている◆さて、パンジーだがその名の由来はフランス語らしい。花弁が人の顔に似ていて、深く思想にふけるように前に傾く容姿が、フランス語の「思想」を意味する単語パンセ(pensée)を想起させたようだ。そんなことからパンジーは、長い間自由思想のシンボルだったと言う。ちなみにパンジーの花言葉は「もの思い」◆パンジーが人の顔に似ているのが命名の由来と述べたが、昭和の詩人サトー・ハチローは「パンジーの花は猫に似ている 小窓に置くとこっちをみている 声をかけると何か言いたそう ひなたで耳までぴくりと動かす パンジーの花は猫に似ている」とその想いを一編の詩に残しておられる◆ところで、英語の「pancy」には思わぬ俗語があるようだ。英語に博識の深い方は、スラングとしてのpancyをご存じかもしれない。この語には「女々しい男」、転じて男性同性愛者の意味があるようだ。おっと失言、「女々しい」の表現はジェンダー規範論者からお叱りをうけそうだ。(志厚)