私塾ネット関東 秋の研修会報告 [2022.10.23]

文:私塾ネット副理事 中村直人

2022年10月23日(日)午後2時より、私塾ネット関東主催の秋の研修会が、東京御茶ノ水のワイム貸会議室Room4Eにて開催された。会場とZOOMでのハイブリッド形式での研修会である。テーマは、「才能を増長させる認知力」。今回の研修では、「学習のつまずき、対人スキルの乏しさ≒認知能力の乏しさ」と仮定して、認知能力を高める取り組みについて考えてみる。種々の実践例を4人の講演者の方達に紹介していただいて、質疑応答を行う。また体験授業もして頂いた。

司会は、事務局長の長江広紀先生。初めに、エリア関東代表の渡辺浩先生からのご挨拶。各塾ロボット講座やプログラミングなど認知能力を高めるためにいろいろな試みをされていますが、今回の研修大会では、単なる紹介に終わらず、やってみてどう生徒さんが変わっていったかなど、突っ込んだ話をして頂き、これからの塾運営に生かしていただきたいと、述べられた。

①第一番目は、ナカジュクの仲野日奈子先生による、プログラミング授業の紹介と報告。

自塾のICTコンテンツの中で、プログラミングの問い合わせが一番多く、プログラミングをゲ-ム感覚で体系的に学べる、QUREOというソフトを導入している。実際に、QUREOの中のキャラクターを右に10歩歩くというプログラムを実演していただく。

マウス一つで、コーディングエリアにイベントや動きのカテゴリーからブロックを積み重ね、コーディング・セーブして一つのプログラムを完成させていく。QUREOのキャラクターのアルゴくんが色々とアドバイスをくれて、それを元に試行錯誤しながら組み立てていく。次に実際の生徒さんの映像を流す。

色々と試しながら、思ったように動かせた時のVサインが印象的であった。

文章をよく読まなかったり、集中力が続かなかった生徒さんたちも、半年後には、物事を順序だてて考えたり、うまくいかない点を自分で解決するようになり、先生に質問することも減った。その結果、思考力が高まり、今まで以上にしっかり解説を読むようになった。問題点を仲間で話し合うなど、コミュニケーション能力が上がった。プログラミング検定3級に合格した小学生も出て来た。〇メリット[コンテンツ面]:プログラミングが体系的に学べ、できることがどんどん増える。大学生・社会人になっても役に立つプログラミング言語の概念を習得できる。[運用面]管理が楽(指導力はあまり大切でなく、カルテ作成も不要)。初めての講師でも、「講師用体験版」で予習ができる。×デメリット「コンテンツ面」遊びと学びの境界が曖昧になりがちで、進度や成果に差が出てしまう。[運用面]注意しないと一人で進んでしまう。QUREOの時間帯として生徒をまとめないと、人件費がかかる。

②続いては、春の研修大会に次いでの、朝日学習館の梶原賢治先生の登場。

人は多様性の生き物!私たちの関わっている子供たちの個性の多様性を子供たちが、身をもって具体的に体現することが、多様化社会のメンバーとして生きていくために肝要。当館では、お絵かきや生き物飼育・モノづくり・自由研究のサポートなど子供たちの多様性の発見のツールとして欠かせない。何ができるかできないかは、基本的にはDNAが決めること。しかし、人の成長はそんな単純なものではない。子育ては、永遠のブラックボックス。そこにどのような芽を吹かせるかは、子育てと教育のやりがいのあるテーマだ。子供の個性に学年はない。子供の多様性への対応の中に学習塾の未来が輝くように思う。

当館では、この15年パズル教室を通して「幼小一貫」での子育てに関わることができた。幼稚園・保育園からかかわった子供たちの学力把握「考える力」の成熟度をどうはかるかだが、四谷大塚の全国統一小学生テストを利用するようになった。(注:先生の塾では、10年連続で全国1位を出している。)その算数は、ひらめきと考える力を要する算数と平面図形と・空間図形の混合問題で、150点満点中100点を一つの目標にしている。ひらめきと考える力なしに100点突破は難しい。

ということで、本日の模擬授業!100/150を超えるための当館における、日常の学習プログラムを体験していただく。

1.まず、お絵かき。点対称や90度回転・180度回転させたものを書く。絵もアルファベットばかりでなくバイキンマンや一反木綿。小麦の絵だと横にウクライナなど時事の話題のおまけもついてくる。
2.アナログゲーム。さいころをいくつも連結したものを渡され、表面の総和を出す。先生が採点して回る。教室は、1.から皆さん大盛り上がり。生徒さんに人気の教材というのが、良く分かる。
3.四谷大塚の小2のサイコロの立体の問題を解く。

以上が90分授業で展開されているそうだ。

③3番手は、のびのび学習教室の長原糸惠先生のロボット講座の実践例。

最初にロボット教材を扱っている、(株)ヒューマンアカデミーの三井崇央さまに実際にロボットをお持ちいただき、動かし説明していただく。動きを自分でプログラムして動かせるそうだが、当日は接続がうまくいかず、残念でした。ダンゴ虫の動きなどは、見ていて大変インパクトがあり面白かった。ロボット教材製作者は、モノづくりの楽しさを伝えたいとのことであるが、保護者は将来役に立つ力、幼稚園・小学生の早いうちからプログラミング的思考力を養わせたいという希望があるようだ。

自分がやりたくてロボット教室を始めたが、そのうちこのロボット製作を国語の力に結び付けたいと長原先生は考えられたそうだ。沢山のパーツの名称を覚え、手順を指さし確認させチェックする。「手をかけず、目をかける」という方針で、すべて自分でやらせる。特に、終わってから長原先生に一人一人、何を作ったか、難しかったところや、どう解決したかなど言葉でしっかり報告できないと帰さないところが肝になっているようだ。初めは何もできなかったT君という子が、続けているうちに国語の成績が大幅アップ。話すのも書くのも苦手だったのが、ある時作文コンクールに参加したら、入賞してしまった。それ以降自信を持ち、中学受験でも国語は、まったく問題なくできたそうだ。最後にT君の当該の作文用紙がスクリーンに映されたが、字がしっかりしているのに一同感心することしきり。

④最後は、私塾ネット関東の研修部長である秀英ゼミナールSS教室の宮澤歩先生。

本日は認知能力をキーワードに研修会を組み立てた。認知能力とは、記憶・知覚・注意・言語理解・判断・推論などの能力で、近年は思いやりとかやる気など非認知能力に焦点が当たっているが、本来両者は車の両輪のようなものである。ここで、今日の講演者の方々の話の中での認知部分と非認知部分を詳細に分析され、表裏一体であることを示される。(委細省略)

実際に学習に困難のあるお子さんは、認知能力の凸凹の凹の部分に問題があるようで、そこの引き上げが課題となる。そこで先生は、種々の教材を開発、使用されている。例えば、梶原先生のお絵かきの図形を漢字にして、字の細部をしっかり観察させ、漢字力・注意力を育てるプリントなど、いろいろと紹介される。それらを塾の開始時に短時間でやらせ、効果をあげているようだ。塾の使命の一義は「できないことをできるようにする、分からないことを分かるようにする」と考え、日々工夫・実践をされているようである。

くしくも、当日の各講演者様から異口同音に「言語を理解する力が大切」との言葉が聞かれた。そこが関東代表の渡辺先生の大変重んじられるところで、夏や秋の関東研修会では色々な面から深めて来た。充実した内容なので、是非他のエリア・団体の方達にも関東研修会にご参加願いたい。当日は、会場・ZOOMを含め20名の参加であった。

次いで、田中宏道理事長の講評と御礼、最後に関東副代表の柳田浩靖先生の〆の挨拶で研修会は終了した(紙面の関係で、多く省略させていただきました点、なにとぞご容赦のほど)。