エリア関東 渡辺 浩(渡辺塾・東京都)
私塾ネットの先生方、大変遅くなりましたが、新年おめでとうございます。昨年はコロナウィルス一色で、こんなにも生活が変わるかというぐらい日常生活が一変しました。この記事を書いている1月末は緊急事態宣言の下、東京都は依然1000名を超える陽性者が出ていて、一向に終息する気配がありません。そんな中、埼玉県や千葉県では私立中学校入試が慎重に行われ、都立高校も1月26日・27日に推薦試験が行われました。そこで今回は、このコロナ禍で行われた都立高校推薦入試の出題傾向を個人的な見解を交えながら書かせていただきたいと思います。
令和3年度入試はコロナウィルスの影響から集団討論が中止となり、ほぼどの都立高校も小論文・作文形式が選択されました。そのような背景もあり今年度の出題傾向は過去とは異なり、個人的には都立中高一貫校の入試問題を彷彿とさせるような問題だと感じました。自塾の生徒が受験した都立戸山高校と都立新宿高校の問題について感想を述べさせていただきます。
まず戸山高校ですが、大問1で『裁判員制度』に対してのデータ読み取り型穴埋め&レポート形式問題が出題されました。この形式は今年の大学入学共通テストの評論文の問題に近いように感じます。また大問2は理科系の問題で『音の波形』のデータをもとに、その操作や仕組みについて記述する問題と、この仕組みをどう役立てるかを記述する問題の計2問が出題されました(どちらも字数制限なし)。戸山高校の意向としては集団討論が取り止めになった分、役立てる系の問題をここに入れてきて、しかも例年ですと討論させていた事を今年は記述で書かせるようにしたと思われます。
また新宿高校の出題は同じく大問2題構成で、『企業による雇用のあり方の変化』をこれまた資料を添えて220字から240字で問題解決を論じさせる問題でした。いわゆる意見選択型の小論文形式問題です。テレワークの活用といった時事問題を絡めてくるあたりは新宿高校の特徴が良く出ていると思われます。さらに大問2は『食文化』についての理由説明問題と、選択したメニューから過程を論じる問題(150字から180字)が出題されました。「和食」を取り上げながら国際評価も取り入れたグローバル系問題にまとめ上げているのは新宿高校の特徴が良く出ていると思われます。余談ですが『食』についての論説文は平成29年度入試の国語の共通問題で出題されたことがあります。もしかしたら作問される方は『食べる』ことが好きなのかもしれません(笑)。
いずれにしても今年の問題は過去の問題とは異なりいわゆる「思考力」を問う新傾向問題に寄せてきたというのが感想です。今後このような新傾向問題が高校入試は勿論、中学入試大学入試で主流になってくるのは間違いないと思われます。そのためにも文部科学省が何度も唱えている『即興力』に注目していきたいと考えております。